アルファロメオ新型ステルヴィオ試乗レポート|ラテンの血が流れるエキサイティングなSUV

アルファロメオ 新型ステルヴィオ  モータージャーナリストの今井優杏さん

ステルヴィオは“とある層”のメンズに刺さりまくり!?

「ステルヴィオの試乗会に行って来ました!」とSNSにアップしたところ、思った以上に反響をもらったのに心底驚いた。

それはかつてないほどの「いいね!」が付いたとか、ホメホメコメントが入ったとか、そういうネット上の反応のことを指しているんではない。

普段は私の投稿にミジンコほどの関心も寄せないような男友達どもが口を揃えて言うんである。「アレ、なに?!めっちゃカッコいいんだけど!」もしくは、「アレ、気になってるんだけど、実際どうなの?」

そうなんですこのアルファロメオ ステルヴィオ、なんだかとある層のメンズには、刺さりまくるらしいのだ。

ラテン満開!アルファロメオ初の量産DセグSUV

アルファロメオ 新型ステルヴィオ 外装色アルファレッド
アルファロメオ 新型ステルヴィオ 外装色アルファホワイト

ステルヴィオは、アルファロメオ初の量産SUVだ。

かねてより海外モーターショーを騒がせていたが、この度日本にもめでたく導入と相成り、我々報道陣にもお披露目されたというわけ。

確かに、欧州でも特にドイツ勢は完全に出尽くした感アリで、それらのSUVたちは視覚的にも見慣れてしまっているし、また超ハイエンド系(ロールスのアレとか、ベントレーのアレとか同じイタリアでもマセラティのソレとか)は真新しいけれどサイズ的にも価格的にもなんだか現実的じゃないし。そんなところにラテン満開!なDセグSUV、ステルヴィオがやって来たんだから、ナニコレ?!と脊髄反射しちゃうのは当然かもしれない。

では教えて進ぜましょう、普段は私のポストをことごとくスルーする男友達どもよ!(しつこい?)そしていつも私の投稿をきっちり読み込んで下さる心優しき読者諸兄にも!(ありがとうございます♪)

アルファロメオ 新型ステルヴィオ 外装色ストロンボリ グレー

ステルヴィオは、イタリア北部のアルプス山中にある峠の名前だという。

来日していたチーフエンジニア、アンドレア・ジザック氏によれば、「それはそれはエキサイティングな道」だそうで、「世界に類を見ないハンドリング・ロード」だという。ちょっと調べてみたら最高地点が標高2757メートル、アルプス山系では2番目の標高を誇るんだそうな。

そんな名を冠するSUVだ。

いや、SUVですよ?ワインディング・ロードの名前?オフロードの名前じゃなくて?!どゆこと?と思ったアナタは鋭い。この名こそが、まさにステルヴィオそのものの性格を饒舌に物語っていると言える。

見た目はSUVでも中身は完全にGTカー

アルファロメオ 新型ステルヴィオ 外装色ストロンボリ グレー

このステルヴィオ、見た目はSUVだがナカミは完全にGTカー。いや、もうスポーツカーと断言してもいい。なんとスパルタンな!と驚いた。

初夏の爽やかな風吹く軽井沢での試乗会だったというのに、ステアリング握りつつ、小汗かくかと思ったほどにガチの味付けなのだ。

プレゼンテーションで語られた、「これほんまにSUVの話?」と聴き直してしまうような「極限までロール値を引き下げ、ドライバーに対してのロール軸に注力しました」の言葉は本当だった。

そんなアホな、と思って試乗したのだが(繰り返すけどSUVだし!)、乗るとまんまとその通り。荷重を生かして曲げる、なんてことはなく、グリップで曲げる!みたいな、ハンドリングがそのまんま舵に反映されていく感覚。もちろんアシもガッチリしていて、とにかくハードなのだ。

今もっともエキサイティングなSUV

全車四輪駆動だが、この四駆システム「アルファロメオQ4」自体がそもそもFRレイアウトベースで開発されているもの。オンデマンド式で、走行状況によって前後輪にトルク配分を行なうが、前輪に最大60%、後輪には100%とやはりオフローダーというよりはオンロードのハンドリング重視の方向性。

アルファロメオ 新型ステルヴィオ 外装色ストロンボリ グレー

もしもステルヴィオにオフローダー的にソフトなサスペンション・フィールを求める人がいるとしたら、それは完全にお門違いなので注意して欲しい。

ただ、“峠道・ステルヴィオ”の名が語るとおり、右へ左への切り返しが幾重にも繋がるコーナリングを攻略するようなシーンや、ドライバーを挑発するように吹き上がるトルクを生む踏み心地のような、GTカーに求める性能。

それらの性能を、SUVクラスの居住空間やラゲッジ容量そのままで叶えたいならば、現段階の市場でいえばこれがチャンピオンかもれしれない。ステルヴィオは、今もっともエキサイティングなSUVのうちのひとつだと思う。

アルファロメオ 新型ステルヴィオ 外装色ストロンボリ グレー

”個性的でヤンチャ”がアルファロメオの真骨頂

アルファロメオ 新型ステルヴィオ

エキサイティング、というのは、じゃじゃ馬とも言い換えられる。

アルファロメオにはドライブモードとして「D・N・A」のスイッチが用意されている。Dはダイナミック、Nはノーマル、Aはオールロード、つまりいわばエコモードのように、やや出力を絞ったモードだ。

でも、結論から言えば、「え、もうAでええやん」なのである。それくらいにわりとカゲキなのだ。2リッター直4エンジンとは思えないほどなのは、ターボの効かせ方が実にラテンそのものだから!

ノーマルのNですら、踏めば突然グイっとトルクが膨らんで、ともすればGに身体を押し付けられるような加速をする。ただ、トランスミッションとのマッチングはまだ熟成の余地がありそうで、たとえば速度を落とした後に再加速、なんていうシーンでは下のギアにすぐに切り替わらず、ややタイムラグを感じさせられたときもあったので、これは今後の改良に期待したい。

そしてDだ。

一般道では「誰が使うのん?」と聞きたくなってしまうほどのピーキーさ!まあ、ガツンと生まれるトルクの派手なこと派手なこと。アクセル踏力以上のソレが瞬間で発生するものだから、ともすればパワーに振り回されてしまうほど!実にラテンらしい、ワイルドさを備えている。

アルファロメオ 新型ステルヴィオ

しかし、特にハードな登坂道は本領発揮!どんな傾斜だってまるでフラットな路面のように楽々走破してしまうのだ。

そしてA。それらのともすれば過敏な味付けが嘘のように、“普通に流せる”モード。血気盛んに走りたい気分でなければ、日常生活にはコレで十二分だ。

それから、ココも上級者向けなのがブレーキの過敏さ。5ポットのブレーキだからとてもよく効くのだけど、その効きはじめを掴むのにややコツが必要だ。ラテン車にはよく見られるフィーリングなので、初めてイタ・フラを選ぶ人は乗りこなすのにコソ練して欲しい。

使い勝手では注意が必要

アルファロメオ 新型ステルヴィオ
アルファロメオ 新型ステルヴィオ  モータージャーナリストの今井優杏さん

使い勝手の点で注意してほしいのは、純正の車載ナビゲーションシステムが用意されていないところ。Apple CarPlay、Android Autoに対応させ、メインディスプレイに表示させるという割り切りだ。

私自身、iPhoneユーザーだが、いかんせんこのApple純正マップアプリの使い勝手がよろしくない。そして現在、Apple CarPlayにはiPhoneなどにダウンロードしているGoogle Mapなどはディスプレイに表示させることが出来ないから、ご注意を。

これほどまでに個性に溢れたステルヴィオの仕上がりで、色々辛口なコメントになってしまったが、”総論で言えばグッド”なのが面白い。

ニヤリとさせられるのだ。

いよいよアルファロメオがヤンチャさを本領発揮してきたな、と。今後を期待させるようなクルマだと感じた。

ジョルジオ・プラットフォーム第2弾

アルファロメオ 新型ステルヴィオ ストロンボリ グレー アルファ ホワイト アルファレッド

同社がこのステルヴィオの前に市場に送り出した、渾身のセダンをおぼえていらっしゃるだろうか。そう、ジュリアだ。

このジュリア、新プラットフォーム「ジョルジオ」を採用した初めてのモデルで、これまで“マニアックな層にしかウケない自動車メーカー”だったアルファロメオを(私見じゃないですからね!同社談ですので、アルフィスタの皆さんはどうか石投げたりしないでね!)、ジャーマン3に食い込むプレミアム・カーメーカーに成長させるべく、造り上げられたモデルだった。たしかに、驚くほどドイツ車をベンチマークした硬質な走りには、ドギモを抜かれたものだ。

アルファロメオ 新型ステルヴィオ 外装色ストロンボリ グレー
アルファロメオ 新型ステルヴィオ 外装色ストロンボリ グレー

そしてステルヴィオは、そのジョルジオ・プラットフォームを使用した、第2のモデルになる。

コンサバティブな購買層を見込まねばいけないジュリアでは「いい子」風に仕上げてきていたけれど、若く、アグレッシブな顧客層を見込んだステルヴィオでは、信頼のプラットフォームをもとに水を得た魚のようなクルマづくりができたのではないかな。

一筋縄ではいかない、だからこそ面白い。刺激を求める人にこそ、選んで欲しいと思う。

刺激的だけど、運転支援装置類は充実しているからご安心を。自動緊急ブレーキ、歩行者検知機能付き前面衝突警報、車線逸脱警報、ブラインドスポットモニターなどのほかにアダプティブ・クルーズ・コントロールも用意される。

現在、デビューを記念したファースト・エディションを展開中だが、なんと、追って3リッター510psのクアドリフォリオも追加されるというから期待して欲しい。

[Text:今井 優杏/Photo:島村 栄二]

アルファロメオ新型ステルヴィオ主要スペック

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