“体を張って”交通安全訴え 諫早のスタント専門会社 大型車の巻き込み … 県内外で事故再現

 「あっ、危ない」-。自動車にはじき飛ばされるスタントマンに観客から悲鳴が上がる。事故の再現による恐怖を実感することで交通事故の防止につなげる「スケアード・ストレイト」と呼ばれる教育手法だ。「プロだからこそできる社会的意義のある活動」と話す長崎県諫早市のスタント専門会社代表、佐藤憲(ひろし)さん(49)。ことし県内外約30カ所で実演し、“体を張って”交通安全を訴える。
 約40分の公演中、佐藤さんは八つ程度の事故を再現。児童生徒や高齢者など対象に合わせて自転車の傘さし運転や大型トラックの左折巻き込みなどの場面を忠実に見せる。状況や原因を具体的に伝えることで、交通ルールを守ることの大切さを学んでもらう。
 佐藤さんは県立諫早東高卒業後、役者を志し上京。「得意分野を身に付けよう」と殺陣(たて)や古武術などや運転技術を磨いた。今も現役の俳優兼スタントマンとして、福山雅治さん出演の映画「マンハント」などにも出演している。
 2009年から関東のスタント会社で「スケアード-」公演に携わってきたが16年に独立。九州でスタントマンを志す若者に技術を伝えようと、諫早市松里町に「アッシュネクストプロモーション」を設立した。
 「スケアード-」では「チームの信頼関係が大事」と話す佐藤さん。見た目の派手さではなく、事故のリアルさを追求。自らハンドルを握り、これまで培った技術で車を制御。車も前面の凹凸を減らすなど共演者の安全にも配慮している。
 佐藤さんは「スタントを通し、今後も交通事故減少や地域活性化に貢献したい」と声に力を込める。

昨年12月に開かれた交通安全教室=佐賀県立唐津南高

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