「特別な感情ない」 坂本弁護士元同僚の小島さん

 1989年11月に起きた坂本堤弁護士一家殺害事件に関与し、事件解明のキーパーソンになった岡崎一明死刑囚(57)の刑が26日、他の確定死刑囚とともに執行された。坂本弁護士を知る元同僚弁護士は「彼に対してだけの特別な感情はない」と語った。

 岡崎死刑囚は、坂本弁護士=当時(33)、妻都子さん=同(29)、長男龍彦ちゃん=同(1)=の3人を殺害した実行犯の1人。一家3人の遺体は新潟、富山、長野県内の山中などに埋められたが、岡崎死刑囚が具体的な供述をしたことで遺棄現場の特定につながった。

 「95年の一家の遺体発掘時に、警察車両の中で待機する岡崎死刑囚を見掛けた」と振り返るのは、坂本弁護士が所属していた事務所の先輩に当たる小島周一弁護士(62)。遺体発見後に遺棄現場で逮捕され、車中でしょんぼりしていた姿が印象に残っているという。

 岡崎死刑囚は90年にも、龍彦ちゃんの遺棄現場を示唆する手紙を県警や弁護士事務所に匿名で送付していた。手紙を基に県警が現場を捜索したが、この時は発見に至らず、それから5年後、松本サリン事件や地下鉄サリン事件を経た95年に数メートル離れた場所で龍彦ちゃんの遺体は見つかった。

 小島弁護士は「彼の供述が解明の突破口になったのは間違いないが、それが心からの反省によるものだったのかどうかは分からない」と指摘。岡崎死刑囚の一審の公判では、坂本弁護士の母さちよさんの代わりに証言台に立ち、遺族としての厳しい処罰感情を代弁したこともあった。

 「他の死刑囚に比べ、岡崎死刑囚とは一番多くの接点があった」と小島弁護士。今回の死刑執行に特別な感情はないとしつつも、「これでよかった、ほっとしたという気持ちにはとてもならない」と、複雑な心境も明かした。

 「こういう犯罪が起こってしまう社会の根っこの部分を考え続けることが、必要ではないか。それが、事件の再発を少しでも防ぐためのすべになると思う」。一連の事件の死刑囚13人全員の執行が終わった節目に、改めて訴えた。

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