「スマホ決済の町」へ 親和銀「よかペイ」導入 QRコード読み取るだけ 来春200カ所を目指す

 親和銀行(長崎県佐世保市)がスマートフォン(スマホ)で買い物の支払いができるサービスを7月から導入し、「スマホで決済できる町」の実現に向け一歩を踏み出した。身近な地銀の参入で普及への期待は高まるが、国内の“現金主義”は根強く、不透明さも残る。
 親和銀行が始めたサービスは「YOKA!Pay」(よかペイ)。銀行と契約した加盟店で買い物した際、スマホの専用アプリを使ってQRコードを読み取ると、本人名義の預金口座から代金が引き落とされる。手軽さが売りだ。
 クレジットカードと異なり専用の端末機器がいらないため、店は導入コストを抑えられる。売上代金は銀行の翌営業日に振り込まれるため、現金の早期回収も可能となる。
 佐世保市などで薬局8店舗を展開する井手薬品も導入した。来店者の多くは高齢者。支払いの際に小銭の受け渡しに手間取る場合や、高額な薬の支払いが必要な場合があったという。
 今後は在宅医療で薬剤師が出向く際にも活用。釣り銭が不要になり、業務の効率化が期待される。今後3年で、客の3割程度の加入を目標としている。浦川清志事務局長は「効率化を、お客への丁寧な接遇につなげたい」としている。
 加盟店は現在、飲食店や美容室など県内で76カ所、うち市内は25カ所。来年3月末までに県内200カ所を目指している。
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 佐世保市内の経営者らでつくる長崎経済同友会佐世保地区は5月、情報通信技術(ICT)活用による企業の生産性向上について、朝長則男市長に提言した。その上で、象徴するアイデアとして「スマホで決済できる町」の実現を求めた。
 させぼ四ケ町商店街協同組合(約90店)は4月以降、スマホ決済導入に向け、各店への説明会を数回開いた。しかしシステム導入に必要なインターネット環境がない店もあり、普及には不透明さもある。竹本慶三理事長は「鉄道各社のICカードが普及したことを考えると、非現金化の流れは間違いない。ただ、すぐに店に効果が出るかどうかは分からない」と語る。
 国内では現金を使わない決済手段は約20%にとどまる。経済産業省は2025年までに非現金比率を40%に引き上げる目標を掲げている。この中心はスマホ決済が担うとみられる。
 長崎経済同友会佐世保地区の代表幹事を務める吉澤俊介親和銀行頭取は、スマホ決済の普及には公衆無線LAN「Wi-Fi」整備の必要性を強調する。その上で「客の利便性向上につなげたい。新しい物好きで何でも受け入れる多様性がある佐世保になじむのではないか」と期待を込めた。

親和銀行が7月から導入したスマートフォンの決済サービス「YOKA!Pay」。アプリでQRコードを読み込むと、すぐに支払いができる

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