熱中症1分1秒が勝負 長崎市消防局司令室 厳しい暑さで通報相次ぐ

 連日の厳しい暑さで長崎県内でも熱中症の患者が増えており、消防には救急搬送を求める119番通報が相次いでいる。長崎市消防局によると、発症しているのは1人暮らしの高齢者や部活動中の生徒らさまざま。屋外に限らず屋内も少なくない。同消防局は救急車が到着するまで首や脇を冷やすなどの応急処置を通報者に指示し、重症化の回避に努めている。現場を取材した。
 26日、同消防局6階の司令室。救急車の運用状況を確認するモニターに表示された温度は午前9時時点で30度を超え、熱中症とみられる通報が次々とかかってきた。
 午前10時5分。「工事をお願いしていた作業中の男性の具合が悪くなり、吐いた」との通報。司令課員は住所や症状などを聞き出しながら手元のボタンを押し、下の階にある中央消防署に救急車の出動を要請した。
 「熱中症の疑いがあるので涼しい場所に移動させ、首や脇の下を冷やしてあげてください」。1分半ほどで電話を切ると、窓の外からは現場に向かう救急車のサイレンが聞こえた。
 午前11時20分すぎ。エアコンが設置されていない90代の女性宅を訪ねた息子が通報してきた。
 「(母が)起き上がらんとです」。「意識や呼吸の有無は」。司令課員の問いに「口をもごもごしよる。よく分からん」と返ってきた。課員は冷静な口調で同じ質問を3度繰り返す。「いつもと(様子が)違う」。そう話した息子は「胸は動きよる、呼吸はちゃんとしとる」。ようやく確認がとれると、司令課員は「救急車が向かってますからね」と相手を落ち着かせるように声をかけた。
 救急現場は1分1秒が勝負。現場から現場への“はしご”も珍しくなく、司令室のモニターには、救急車の出動を意味する赤色が次々と増えていった。
 同消防局によると、1人暮らしの高齢者がエアコンのない部屋でぐったりとしているところをホームヘルパーや民生委員らが見つけ、慌てて通報するというパターンが目立つという。鹿山正司令課長は「高齢者は暑さを感じにくくエアコンを嫌う人もいるが、適正な室温を保つため家族など身近な人がしつこく使用や設置を促すしかない」と話す。また通報の際は「司令課員が応急処置の内容を分かりやすく伝えるので、慌てずに対応してほしい」と呼び掛けた。
 26日は、他にも郵便局員が配達中に体調を崩し病院に運ばれるなど、同消防局管内(長崎市、西彼時津、長与両町)で9人が熱中症で搬送された。

119番通報を受ける司令室。モニターでは出動した救急車の車両名が赤く表示される=長崎県長崎市興善町、市消防局

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