米海軍ヘリから窓落下 厚木基地内、人的被害なし

 米軍厚木基地(大和、綾瀬市)で27日、米海軍のヘリコプターが離陸直後に窓を敷地内の滑走路上に落下させる事故があった。防衛省や地元自治体は在日米軍に対し、詳しい情報の提供や原因究明、再発防止を申し入れた。人的被害は確認されていないという。小野寺五典防衛相が省内で記者団に明らかにした。

 同省や地元自治体に対する米側の説明によると、同日午前11時50分ごろ、日本以外を拠点とする米海軍の大型ヘリMH53Eが同基地を離陸したところ、2~3メートルの高さでポリカーボネート製の窓とアルミやプラスチックからなる窓枠が落下。敷地内にある海上自衛隊厚木航空基地の隊員が確認し、米側が認めた。事故機は当面、厚木基地にとどまるとみられる。

 小野寺氏は「被害がなく基地内での事案だとしても、窓の落下は大変問題だ」と指摘。黒岩祐治知事も東京都内で記者団に「またかという思い。米軍の事故はあまりにも多発している中で、大変ショックを受けている」と述べた。

 窓の落下事故を知り、同基地近くに住む主婦(39)は「安全を第一にしてほしい。何か起きてからでは遅い」と声を震わせた。基地近くの公園で子どもを遊ばせていた母親も「子どもに何かあったらと思うと外遊びが怖い」と話した。

 米軍機の部品落下・紛失を巡っては、県内外で事故が相次いでいる。昨年12月には沖縄県宜野湾市の小学校運動場で、隣接する米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリから、重さ7・7キロの窓が落下。地元の反発で米側は小学校に謝罪したが、その後「人為的ミス」と結論付けて6日後に飛行を再開した。

◆「無関心は事故招く」 沖縄国際大・前泊教授が警鐘

 「窓の落ちた場所は関係ない。落ちたこと自体がとんでもないこと。厳しい姿勢で対応しなければ、重大なインシデントを招きかねない」。基地問題に詳しい沖縄国際大学の前泊博盛教授(57)は警鐘を鳴らし、日本政府だけでなく、県民も抗議の声を上げるべきだと指摘する。

 米軍機の事故やトラブルが相次ぐ背景には、米国防予算の削減でパイロットの練度が下がったり、機体の老朽化や整備不良が増えたりしていることなどを挙げる。「日本政府は国民の安全を米軍に任せきりにせず、機体の整備や運用をチェックできる仕組みを作ることが必要」と訴える。

 昨年12月、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)近くの保育園に米軍ヘリから部品が落下したとみられる事故が起きた際、日本政府は抗議をしなかった。近接する小学校の校庭に米軍ヘリの窓が落下したのは、その6日後だった。

 全国の上空を米軍機が飛び回るいま、事故が起きるのは沖縄だけではない、と前泊教授。「抗議せず黙っていれば軽視され、いつか重大事故につながっていく。無視しない、無知にならない、無関心にならないことが大切」と力を込める。

米軍ヘリによる窓落下事故が起きた米海軍厚木基地=27日午後6時ごろ、大和市内

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