29日に横浜スタジアムで行われた高校野球の南神奈川大会決勝で、横浜高校が同校初の3連覇を果たし、30年ぶりの決勝に挑んだ鎌倉学園高校は悲願の初優勝を逃した。横浜高の平田徹監督(35)は自身初めての全国の頂を見据え、「古豪復活」を願った鎌学OBやオールドファンは大声援でスタジアムを埋め尽くした。
◆心交わし「重し」外す「多くの支えに感謝」
「感無量です。支えてくれた多くの人に感謝したい」。試合後、平田監督の言葉には3連覇の喜びと同時に、全国に挑む使命感がみなぎっていた。
南神奈川は、横浜が勝って当たり前だろう-。この日、特大のホームランで優勝に導いた4番万波中正選手は「自分たちにも、周囲のそんな言葉が耳に入っていた」と打ち明ける。
指揮官も「勝って当然」のプレッシャーと闘いながら、この夏に挑んでいた。32歳の若さで春夏5度の全国制覇を誇る名門を引き継ぎ、1年目から神奈川の頂点を守り続けているが、2016年の甲子園は2回戦、昨夏は初戦敗退。「神奈川の代表として恥ずかしい気持ちでいっぱい。情けない…」とその試合直後にうなだれた平田監督は、周囲からの「神奈川で勝てても全国で勝てない」との批判を1人で受け止め、ナインには顔色一つ変えず、伸び伸びと野球に打ち込ませてきた。
就任以来、選手とのコミュニケーションを何よりも重要視してきた。月に何度か寮に泊まり、風呂場での「裸の付き合い」で心を交わした。「次の練習でこれを取り入れようと思うんだけど、どうかな?」。選手と同じ目線で会話してくれる指揮官のことを、齊藤大輝主将は「重しを外してくれる。自分たちもやりやすい」と話す。
この日、万波選手や山崎拳登選手がホームランを放った際には、ベンチでとびきりの笑顔を見せ2人を抱き締めた。選手は戸惑っていたが、これも大舞台での「重し」を外すためだ。
入学時から手塩にかけて育てた「平田野球の1期生」たちが神奈川史上3校目の3連覇の偉業を果たしてくれたが、「ここが本当の頂点ではないので」(齊藤主将)と、この日は胴上げはなかった。
「これまでなかなか甲子園で結果を残すことができなかった。神奈川の代表として、ことしこそ長く甲子園にいたいです」。その言葉が、全てだった。
◆鎌倉学園OBら大声援
30年分の思いを結集させた怒濤(どとう)の大応援だった。
鎌倉学園高は終盤まで防戦一方の展開となっていたが、7点を追い掛けた最終回に一気に3点を奪い返した。そこからはスタンドが揺れるほど三塁側の応援席は大盛り上がり。準優勝に終わった後も、横浜高ナインの校歌斉唱を手拍子でたたえるなど、すがすがしいムードだった。
30年前、法政二高と決勝を戦った時の左腕エースだった家城良則さん(47)は「あの時は1-9と一方的にやられた。大舞台に慣れているチームの差はあったが、最後に意地を見せてくれて頼もしかった」と後輩をねぎらった。
20年前の記念大会で西神奈川8強入りした時のエースで、ベイスターズでも活躍したOBの長田秀一郎さん(38)も早朝6時から並んで応援。「決勝で戦えたことは一生の思い出になる」とエールを送った。