【高校野球南神奈川大会】横浜、名門100回目も主役

 高校野球の第100回全国選手権神奈川大会は29日、横浜市中区の横浜スタジアムで、横浜-鎌倉学園の南神奈川の決勝が行われ、横浜が7-3で鎌学を下して3年連続18度目の優勝を飾った。同校初で、法政二、東海大相模に続いて史上3校目の3連覇。

 昨秋、今春に続いて3季連続の顔合わせとなった対決には、満員札止めの3万人が詰め掛けた。横浜が初回に4番万波中正(3年)の2点二塁打で先制し、三回にも万波の2点本塁打などで3点を追加した。

 最終日は30日午前11時から、同スタジアムで慶応-桐光学園の北神奈川の決勝を行う。

 横浜が出場する全国選手権大会は8月2日に組み合わせ抽選会が行われ、同5日から17日間、兵庫県西宮市の甲子園球場で開催される。

▽決勝

横浜

203 010 010|7 

000 000 003|3

鎌倉学園

【評】横浜が序盤の集中打と投手リレーで逃げ切った。初回は3短長打で2点を先制。4番万波は三回に2ランを放つなど3安打4打点と活躍し、八回の山崎の一発も効いた。先発左腕板川は内外角の制球力で粘投。最後は及川が締めた。鎌倉学園は大量リードを許したが、三回途中から大浦が力のある直球を武器に5回1失点の好救援。九回に四球を挟んで3連打で3点を返し、意地を見せた。

◆万波 特大弾 挫折経験し大躍進

 最後もやっぱり、この男だった。台風一過のハマの夏空に消え入りそうな特大の打球が、横浜スタジアムの左翼席最上段に突き刺さった。横浜の4番・万波が、ダイヤモンドを悠々と一周した。

 2点リードの三回無死二塁。初球だった。「できることは全て、やってきた」。膝元へ落ちる変化球をすくい上げた。高校通算40号で、神奈川の100回目の夏の主役となった。

 コンゴ人の父を持つ桁外れのパワーの持ち主。中学時代は野球に加えて砲丸投げでも全国大会に出場し、「甲子園」と「プロ野球」という二つの夢を追い掛けて名門に足を踏み入れた。190センチ、88キロの巨体で1年生から注目を集めたが、順風ばかりの3年間ではなかった。

 1年前の夏、東海大相模との決勝で5三振。そこから打撃不振にあえぎ、打順は次第に下位に下がり、スタメンからも落ちた。レギュラーらを中心に生活する寮生活も送れなくなり、都内の実家から電車で1時間半もかけて、横浜まで通学するようになった。

 「もう一度、原点に立ち返ろう」。度重なる挫折は、むしろ万波を開き直らせた。「自分の打撃フォームをつくり上げろ」。それが平田徹監督(35)からの言葉だった。通学生でありながら、毎朝5時に起きて、誰よりも早くグラウンドに通った。

 もちろん、指揮官も見捨てはしない。毎日のように打撃投手を買って出た。試行錯誤し続けた打撃フォームが、ノーステップの打法からすり足へとようやく固まったのは開幕直前の6月。背番号13でメンバー入りを果たし、この夏の24打数13安打、2本塁打、12打点という大躍進につなげた。

 「背番号が13だとか、打順だとか、もう関係ない。とにかくチームの勝利に貢献するだけ」と万波。静かに闘志をたぎらせながら、名門のスラッガーが、三たび夏の聖地へ。

3年連続18度目の優勝を果たし、笑顔の横浜ナイン=横浜スタジアム

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