習近平が”暗殺ストレス”で外遊先で異常警戒中?「林彪の二の舞」になりかねない中国共産党の内ゲバ実態とは

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

7月19日、中国の習近平国家主席はアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに到着し、3日間にわたり滞在しました。この訪問では、中国共産党の「一帯一路」の方針を展開し、石油探査協定や貿易協定、ドバイの不動産事業などについての会談が行われました。

その中でも注目したい事項は、CCTV(中国機関メディアの中央テレビ)が報道した「アラブ首長国連邦は中国に友好を示すため、習近平主席の専用機に、自国の空軍の戦闘機12機の編隊を形成して守衛した」という動きです。

http://news.cctv.com/2018/07/20/ARTIiWzJqCG9XSbIRK0fAfG5180720.shtml

外交と軍事に詳しい方なら、「戦闘機12機」という物々しい数が引っかかったはず。

ここ最近の習近平外交を見ても、16年チェコ訪問では戦闘機が「2機」、17年のフィンランド訪問は「2機」、同年ドイツ訪問でも「2機」でした。ちなみに18年4月に海南省博鰲(ボアオ)国賓館で、パキスタンのアバシ首相と会見した時には、習近平の専用機に人民解放軍空軍の「戦闘機8機」の編隊を形成して守衛し、6月12日の米朝首脳会談の際には、金正恩総書記が乗った中国旅客機の周囲に、人民解放軍空軍の「戦闘機4機」で守衛しています。

通常の外交儀礼として、相手国の首脳の専用機に「戦闘機4機」くらいを派遣するのが十分であるのが、おわかり頂けたかと思います。アラブ首長国連邦は際立って空軍が強靭なわけでもなく、この異様な量の戦闘機を出したのは、習政権のリクエストと見られる、と中国の民主派活動家の間では推測が飛び交っています。ではなぜ、このような厳重な警備にしたのでしょうか。

■中国共産党の内ゲバの垣間見え!? 絶対権力者を悩ませる「暗殺ストレス」

習近平主席がUAEを訪問する数日前のこと。人民日報で2日間にわたり、珍しく習主席に関する報道が全部消えました。連日のように習主席の活動ばかり持ち上げているのに、不自然と言わざるを得ません。この奇妙な動きの正体は、党内の反習近平勢力が人民日報を干渉している、と民主派活動家の間で考えられました。つまり中国共産党内部の習近平派と反習近平派がいまだ闘争しているのです。

そして、2012年の共産党第18回全国代表大会で総書記に就任して以来、習近平を悩ませ続けるのは「暗殺ストレス」だと言われます。米国拠点のニュースサイト「博聞新聞網」に、17年12月にも専用車両に乗り込もうとした際に、爆発が起こり、習主席は難を逃れたものの、そのストレスで腹痛を起こし、入院したと報じられました。暗殺未遂の数は10回以上にも及ぶといい、その多くが「北京を離れたようとした時」に起こっているのも、習主席を悩ませるタネとなっているようです。

中国の歴史に詳しい方なら、すぐに思い浮かべるのは「林彪氏一家の暗殺事件」でしょう。1971年、林彪氏は「ポスト毛沢東」と共産党内で称賛され、彼は次期の指導者として擁立されました。しかしながら、林彪氏は毛沢東の退任を待たずして、1971年9月、当時空軍作戦部副部長だった林彪氏の息子・林立果氏と共謀して地方視察中の毛沢東の爆殺を企て、その座を即座に狙ったのです。

しかし、暗殺計画は毛沢東に筒抜け、失敗に終わりました。その後、林彪氏は息子と妻(葉群)一家がソビエト連邦へ亡命しましたが、飛行機はモンゴル人民共和国に墜落し、全員死亡しています。

当時の中国の公式報道では、「ガソリン不足で墜落した」と書かれていましたが、欧米の歴史研究者は「デマである」という見解を示しています。毛沢東は自分を暗殺しようとした林彪氏を断じて許さず、人民解放軍の戦闘機が発射したミサイルによる撃墜や、毛沢東の指示で操縦士が故意に墜落し自殺して共産党の使命を果たした、などの諸説があります。

今回の「戦闘機12機」編隊は、林彪氏と同じく、習主席が外国にいる時に人民解放軍の弾道ミサイルや戦闘機が専用機を撃墜させないように、厳重に警備を強化したと見られます。

もう一点の根拠として、7月18日から6日間、習近平主席がアラブ首長国連邦を訪問する前日に突如、浙江省の近海である東シナ海において、人民解放軍海軍が軍事演習を行いました。通常、台湾を威嚇する軍事演習は福建省泉州市で行われますし、日本やアメリカへの武力誇示にも見えません。この仮想敵の指向性のない軍事演習の狙いは、中国国内の反習近平派向けの武力誇示であり、習主席が外訪中に暗殺されないような恫喝であるのではないか、とも結論づけることができるのです。

習主席はこのまま一生、暗殺されそうな不安に怯える日々を過ごすでしょう。そのストレスを解消するために、政権はさらに反米反日の国策を強化し、自分の命を脅かす国内の敵をアメリカや日本に逸らしてくることも想定できます。

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