金属行人(7月30日付)

 鋼材流通業界団体のイベントで相撲部屋を切り盛りするおかみさんの話を聞く機会を得た▼親方が独立し、部屋を興して十数年余。弟子が取れず部屋存亡の危機にも直面した。今も昔もスポーツや格闘技の世界が若者にとって夢や憧れであることには変わりないが、多様化した分、力士志願者は決して多くないと言う。しかも閉鎖的なイメージも先行してか、あるとき自身の中で「相撲部屋への世間一般の印象が必ずしも良くない」と感じたこともあったとか▼それを「何とか変えなくちゃ」と一念発起し「知ってもらう」ことに奔走。部屋の在りのままをガラス張りにし、ウェブサイトを開設したりSNSを積極的に活用したり。部屋見学(旅費は部屋が負担)を奨励し、稽古場も開放するなど「負のイメージを変えてもらうことは何でもやった」▼初めは失敗ばかり。紆余曲折も多々あれど、こうした地道な宣伝・PR努力と苦労が奏功し、今は自分自身の意思で入門した力士が10人以上に増加。入門者不足に悩む角界におけるスカウト成功事例として注目されるまでになった▼媒体を有効活用したアピールがいかに大事か。目下、労働力確保に頭を悩ます中小モノづくり現場にとっても一つのヒントになるのでは。

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