好調の楽天、山崎武司氏が抱く平石監督代行への期待「天下統一してほしい」

楽天・平石監督代行【写真:荒川祐史】

就任後は17勝10敗と好調、元同僚の山崎氏は「いろんなことに屈せずやってほしい」

 楽天が強い。今季は開幕直後から低空飛行を続け、21勝41敗1分となった6月16日には成績不振を理由に梨田昌孝前監督が辞任。しかし、平石洋介監督代行が指揮を執るようになってから息を吹き返し、就任後は8勝8敗で前半戦を折り返すと、後半戦は9勝2敗と快進撃を見せている。「平石楽天」の戦績は計17勝10敗の勝率.629。まだ最下位ではあるものの、クライマックスシリーズ(CS)出場圏内の3位までは6.5ゲーム差まで詰まってきた。

 29日のソフトバンク戦は平石監督代行が就任してから初の無得点に終わったが、前日まで打線が機能する試合が多く、明らかな変化が見えている。現役時代に楽天でプレーし、平石監督代行ともチームメートだった野球評論家の山崎武司氏は「(今後が)楽しみ」とした上で「天下統一してほしい」と後輩にエールを送った。

 楽天時代、山崎氏は不動の4番としてチームを引っ張っていた一方、平石監督代行は1軍と2軍を行き来する選手だった。しかし、引退後に2軍などで指導者としての経験を重ね、ついに1軍でチームを指揮する立場となった。メジャーリーグでは元スター選手が指揮官に就任するケースはむしろ少なく、マイナーで地道に経験を積んだ指導者が名監督となることが多いが、日本では選手時代の実績が重視される傾向にある。だからこそ、山崎氏は平石監督代行に成功してほしいと願っているという。

「昔からそういう風潮だよね。日本は、やっぱり現役として活躍した人(が監督になる)。でも、中には伊原(春樹)さんとかいるし、栗さん(日本ハムの栗山英樹監督)だってそう。実績のある選手がいい監督になるとは限らない。2軍の痛みを知る選手がいいコーチになるというのもある。そこまで上り詰めるのは、運も実力も兼ね備えていないといけない。

 平石監督代行は、俺たちがいた時は1軍で鳴かず飛ばずの選手で、引退してからコーチ業をやって、実績を作ってあそこまでのし上がってきた。もちろん、キャリアというのは野球選手にとって最大の勲章だけど、そういうのが平石監督代行にはないわけだから、自分らしい監督像でやってほしい。監督代行になって頑張っているし、より選手に近い立場でものを言えるところにいたわけだから、全く梨田前監督と違ったことをやってほしい。いろんなことに屈せず、やっていくのが一番だと思う」

中日OBの野球解説者・山崎武司氏【写真:岩本健吾】

「ここでいい成績を出せば、来年は『監督をやれ』と言われる」

 山崎氏は「一番怖いのは、このまま(最下位で)終わって平石監督代行に全部責任を負わせてしまうこと」と危惧すると同時に、かつての後輩に温かいエールを送った。そして、「どれだけ腹をくくってやれるかや」と“らしい”言い回しを使いながら期待を寄せる。

「監督というのは、どれだけ腹くくってやるかじゃないの。平石監督代行がどこまで腹くくってやれるか。ダメならやめればいい。それだけの話や。日本は何かあったらすぐに『やめろ。責任取れ』となる。それなら『じゃあ、やめたるわ』でいい。初めにしっかり自分を持ってやれば、全然いい。屈せずにやれる。なんでみんな腹をくくれないの? 生活とかそういうの(を気にしているの)かな。

 俺は平石監督代行とも喋ったけど、先輩として一番言いたいのは『腹くくれ』と。『ダメならお前が責任取ればいいんだ。だからお前の好きなようにやればいい』と。“平石イーグルス”にしちゃえばいいんだよ。自分の色に染めればいい。それが間違っていようが合っていようが、『監督をやれ』と言われたんだから、自分の色に染めて大いに結構。それで評価されるわけだから。

 俺は楽しみだと思ってる。彼にとってはいい経験。正直に言って、日本球界だと彼の実績で監督になれるというのはほぼ難しいけど、大役を仰せつかったわけだから。ここでいい成績を出せば、来年は『監督をやれ』と言われるかも。『僕はナンバー2、ナンバー3でいい』と言う人もたくさんいるけど、ここまで来たら平石監督代行に天下統一してほしい」

平石監督代行を支える選手にも“ゲキ“「ピリッとしたものを作っていかないと」

 天下統一、プロ野球界で言えば日本一をいつか監督として成し遂げてほしい。平石監督代行の元チームメート、先輩として、山崎氏は心からそう願っている。そして、そのためには選手が変わることも必要だと訴える。

「(梨田前監督時代を含めて)何度か仙台にも行ってるけど、チームの雰囲気はそんなめちゃめちゃ悪いとは思わなかった。若手が頑張ってるね。田中、古川とか、去年から言えば高梨とか、そういう無名だった選手が活躍するわけだから。あとは全体的に見て、チームとしての厳しさがないように見えちゃうね。外から見て。全体的に少しぬるくなっちゃったなと。野村さんがいなくなって、星野さんが亡くなられて、ピリッとしたものがなんで消えちゃったのかなという印象がある。そういうものがないとダメ。なあなあというか、いいか悪いかは分からないけど、なんかダラッとしとる。

 嶋はそういうことをしっかりと言える人間だし、嶋だけじゃなくて銀次もその域に達しているし、外から来た今江もそう。チームの中のピリッとしたものを作っていかないと。(その試合が)ダメならまた明日、という状況になっちゃう。個々の選手の力はある。チームの力は十分にある。若手も頑張ってくれているから」

 一時は絶望的と見られているCS進出も、決して不可能な数字ではなくなってきた。今年届かなくても、このままいい戦いを続けていけば、来年につながる。平石監督代行が正式に監督に就任することになるかもしれない。かつて主砲としてチームを牽引した山崎氏は、楽天の“逆襲”を望んでいる。(Full-Count編集部)

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