【高校野球北神奈川】慶応・森林監督、涙で宙舞う

 30日に横浜スタジアムで行われた高校野球の北神奈川大会決勝。慶応高が10年ぶり5度目の優勝を果たし、春夏連続の甲子園出場を決めた。就任3年で初めて夏を制した森林貴彦監督(45)は「選手を褒めたたえたい」とナインを誇らしく見つめた。

 教え子たちの手で10度も宙に舞った。「センバツで悔しい思いをして、何とかもう一度甲子園に戻りたい一心で頑張ってきた。成し遂げた選手たちは本当にすごい」。指揮官は、うれし涙をこらえきれなかった。

 就任1年目の夏から決勝に進んだが、横浜に完敗。続く秋は関東大会準々決勝でサヨナラ負け。あと一歩で選抜を逃し、昨夏は8強止まり。「このまま甲子園に行けないのかと不安もあった」というどん底を乗り越え今春は選抜大会に出場したが、初戦で敗れた。

 慶大時代から慶応高の学生コーチを務め、一度は一般企業に就職したが、指導者の夢を捨てきれず3年で退社。大学院でコーチング論を学んだ。慶応幼稚舎の教員を務めながら、恩師の上田誠前監督の下で再び後輩たち指導に当たった。今も小学生の担任を受け持ち多忙な日々を送る。

 児童から「モリバ」の愛称で大人気の指揮官は「高校生は子どもっぽさ、純粋さを持つ一方、大人のような論理性や体力がある。その両面を引き出せるのは、小学校で教えている僕にできる強み」と話す。

 試合ごとにテーマとなる四字熟語を提示し、チームの士気を高めた。決勝は「初志貫徹」。「野球を始めたとき、負けて悔しかったとき。みんなそれぞれ原点となる『志』があるはず。それを思い出し、試合を乗り越えてほしかった」

 慶応高時代の3年夏は4回戦敗退。その年に優勝した桐蔭学園高の1年生・高橋由伸・現巨人監督のプレーを見て「別次元」と打ちのめされたという。30年近くがたち、指揮官として夏の聖地に立つ時がきた。「神奈川で苦しい試合を勝ち上がってきた。自信を持って、甲子園に挑みます」

就任から3年めで夏の甲子園出場を決め、笑顔でナインに胴上げされる森林監督=横浜スタジアム

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