30年近くソ連に君臨した独裁者スターリン。この映画は、スターリンが自室で倒れてから盛大な葬式が執り行われるまで、その裏で行われていた側近たちの壮絶な権力争いを、ブラックユーモアたっぷりに描いた作品です。
スターリンは自分の権威を守るため、怪しいと思ったら最後、たとえ近しい人間であっても粛清リストに載せては、拷問、処刑を繰り返してきた男。そんな男が死ぬ直前まで、彼の側近を務めてきた人間たちだからこそ、全員が狡猾で、腹黒く、とことんヤバい連中ばかり。それまでは、スターリンの下で仲良しごっこをしてきた彼らはトップが死んだ途端、次の独裁者になるため、あの手この手でお互いを陥れようと、クズな作戦を立てて必死になります。いい歳をしたおっさん官僚たちが、嘘をついたり、おべっかを使ったり、罠に陥れたり、と必死に走り回る姿が、なぜだかおかしくてたまらない。
このドラマって、一歩間違えたら史実を描いた歴史ドラマになるところだと思うのですが、彼らを演じるのはフルシチョフ役の怪優、スティーヴ・ブシェミをはじめ、演技派ばかり。名優たちの絶妙な演技によって、シリアスな史実が、とんでもなくブラックで笑える人間ドラマになっています。この映画を観ていると、日本の政治家たちもこんなくだらない駆け引きをしているのかもしれないなあ、なんて、つい想像してしまったのでした。★★★★★(森田真帆)
監督:アーマンド・イアヌッチ
出演:スティーヴ・ブシェミ、サイモン・ラッセル・ビール、ジェフリー・タンバー
8月3日(金)から全国公開