長崎平和宣言骨子 核廃絶、責任ある行動を 各国に核禁参加呼び掛け

 長崎市の田上富久市長は30日、長崎原爆の日(8月9日)の平和祈念式典で読み上げる長崎平和宣言の骨子を発表した。宣言では、核兵器廃絶に向け、日本を含む世界各国に核兵器禁止条約への署名、批准を要請し、責任ある行動も求める。市民社会に対しては、できることから始めるよう呼び掛ける。
 核禁条約は国連で昨年採択されたものの、批准国数が規定数に達しておらず、発効していない。核保有国と「核の傘」に依存する国、それに対する非保有国との対立も続いている。
 市役所で記者会見した田上市長は「核廃絶は世界が目指すことの原点で、最終ゴールだということを改めて思い起こしてほしい」と今年の力点を説明した。宣言では、核兵器の非人道性や核廃絶を掲げた国連決議に言及し、核抑止論が根強い現状への危機感を表明。核兵器に依存しない安全保障体制の構築を訴える。
 日本国憲法に関しては平和理念や不戦の誓いに触れる。安倍政権が目指す9条改正を巡って平和宣言の起草委員会で9条堅持を訴えるべきとの指摘が相次いだが、田上市長は「まずは国民的議論がなされるべき」と述べ、改憲の動きに触れないことを明らかにした。
 北朝鮮の非核化を巡る動きを機に、日本政府に対し朝鮮半島と日本を含む「北東アジア非核兵器地帯」実現への尽力を求める。被爆者援護の充実や被爆体験者の救済も政府に要請する。
 平和宣言は被爆者や有識者らによる起草委員会が5月から3回会合を重ね、内容を練った。田上市長が9日の式典で読み上げ、10カ国語の翻訳版も市ホームページに掲載、世界へ発信する。

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