国民的バンドの新たな境地 サザンオールスターズ40年

 サザンオールスターズのベストアルバム「海のOh,Yeah‼」が発売された。彼らはいかにして日本を代表するバンドとなったか。サザンを長く取材してきた音楽評論家の小貫信昭さんに、歩みをたどってもらった。

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 40周年を迎えたサザンオールスターズの歴史を、手短に語るのは至難の業である。ただ、40周年にちなんで彼らの作品を40曲思い出そうとすると、若干時間は要するが、意外に苦もなく…、であることが、すなわちこのバンドの充実したバンド歴を物語るのだろう。

 1978年のデビューは今も語り草である。「勝手にシンドバッド」は、世に衝撃を与えた。それまでの音楽グループが表現し得なかった喜怒哀楽の〝楽〟の部分が余計に伝わったのか、彼らはコミックバンドと間違われもしたが、すぐさまバラードの名曲「いとしのエリー」を発表し、ロックバンドとしての地位を手に入れる。

 80年代の快進撃は、ありとあらゆる挑戦の結果であった。ロックの衝動を追求しつつ、歌謡曲のうま味を〝本歌取り〟するようなヒットも連発。桑田が得意とした、言葉を意味から解放し、サウンドとして仕立て直す作詞法や歌唱法は、邦楽と洋楽の新たなマリアージュをもたらした。

サザンオールスターズ

 いったん各自のソロ活動が増えたが、10周年に再び結集。やがて90年代となり、「涙のキッス」では下の世代のファンも獲得し、支持層の厚さから、サザンは国民的なバンドと称されるようになった。

 大衆性を保ちつつ、先鋭的な作風も忘れなかった。「シュラバ★ラ★バンバ」の英語と日本語のダブルミーニング。「マンピーのG★SPOT」は、タイトルからして倫理規定ギリギリだった。

 桑田がソロ活動で得た刺激もバンドへ跳ね返った。日本語への新たなアプローチ、そして、テクノロジーを駆使した自在の音作りから、バンドの等身大の音楽へ立ち返る動きも見せた。

 デビュー20周年にリリースされたベストアルバム「海のYeah‼」は、300万枚を軽く越えるセールスを記録。それでも、攻めの姿勢は忘れず、今度は「イエローマン~星の王子様~」といった、針を正反対に振り切るアバンギャルドな作風も披露した。

 健在ぶり、などではなく、これまでを上回るメガヒットとなったのが2000年の「TSUNAMI」であり、さらに「HOTEL PACIFIC」では、極上の音楽エンターテインメントを数分間に閉じ込めてみせた。

 アルバムのリリースこそ短いインターバルとはいかなくなっていくが、2005年の「キラーストリート」にしろ、10年後の「葡萄」にしろ、出せば世の中を裏切らない充実作ばかりだ。

 また、歌うテーマは意義あるものも増えていく。35周年を機にリリースされた「ピースとハイライト」では、肩肘張らないポップな曲調でありつつ、平和への提言もなされた。

「海のOh,Yeah‼」のジャケット

 そして今年。40周年に再び、サザンの活動が活発化している。新たな企画アルバム「海のOh,Yeah‼」は、新曲が3曲収録されることが意義深く、特に「壮年JUMP」では、バンドが新たに見つけた境地〝軽(かろ)み〟へと到達している。

 もはや5人のメンバーがよくいう家族のような存在でもあるサザンオールスターズ。来年はツアーも予定されているので、ぜひ会場に駆けつけたいものである。(音楽評論家=小貫信昭)

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