「経営統合」影潜め 日産・ゴーン会長 動向注目 ルノー、三菱自と提携強調も…

 欧州で取り沙汰されているフランス自動車大手ルノーによる日産自動車(横浜市西区)の経営統合について、日産会長のカルロス・ゴーン氏の動向が注目されている。ルノー最高経営責任者(CEO)と三菱自動車の会長も務めるゴーン氏は、3社の企業連合の資本関係を再構築する必要性を指摘し経営統合の可能性に言及したこともあった。しかし、三菱自や日産の6月の株主総会では、3社の独立性に基づく提携(アライアンス)強化を強調。統合の話は影を潜めた格好だが、ゴーン氏の去就と併せてさまざまな臆測がくすぶる。ゴーン氏の真意はどこに。 

■仏政府意向か

 3社の資本関係は複雑だ。現在ルノーは日産に約43%を出資し、日産はルノー株の15%を保有。三菱自は日産の傘下にある。ゴーン氏はルノーの最高経営責任者(CEO)と三菱自の会長も務めている。

 フランス政府はかねてルノーと日産の「完全統合」を求めているとされる。ルノーCEOからの退任観測もあったゴーン氏の再任が決まったのは、ゴーン氏に日産との関係強化を求める同政府の意向との見方もある。

 ゴーン氏は2月のルノーの決算会見で、日産や三菱自との連合について3社の結び付きや相乗効果の重要性を強調する一方「連合を維持していくためにどんな組織にする必要があるか熟慮が必要だ」と指摘。3月にはフランスのテレビ番組で3社の経営統合の可能性について「どうして『ない』と言えるのか」と述べ、選択肢として排除しなかった。

■トーンダウン

 ところが、6月に入り日本で株主総会シーズンが到来すると、統合を巡る発言はトーンダウンする。三菱自動車の株主総会でゴーン氏は「三菱自や日産がルノーの完全子会社になる可能性はゼロだ」と述べ、ルノーによる支配を否定。日産の株主総会では「今後も各社の成長と利益向上のスピードを上げるターボチャージャーとしての役割を果たしていく」と企業連合の関係強化を訴え、ルノーによる経営統合の話は“封印”されたかのように見える。

 ただ、今なお完全統合の臆測は払拭(ふっしょく)されていない。ゴーン氏はルノーのCEOに再任されたが、既に後継候補と目される人物が最高執行責任者(COO)に就いており、ゴーン氏がCEOを任期途中で退職するとの観測も出ている。剛腕で3社連合を束ねるゴーン氏が去れば、統合を主張する勢力が拡大する可能性がある。

■議論の再燃も

 こうした動きを、日産と取引のある自動車部品メーカーも注目している。県内には日産と取引する部品メーカーが集積。ゴーン氏の改革によって従来の「系列関係」は実質的に解体され、部品メーカーは独立性を高めている。しかし、世界的な自動車メーカーである日産からの受注が経営の柱の一つを成しているのも事実だ。

 県内のある自動車部品メーカーの幹部は「注目は、日産はどこの国の自動車会社なのかということ。このままではいずれフランスに向いてしまうのではないか。トヨタは300万台の国内生産を堅持すると言っているが、日産はどうなるか危惧している」と強調した。

 3社連合による2018年上半期(1~6月)の世界販売台数は2年連続で首位を守ったが、連合の中核である日産は台数を落とした。主力市場の米国で苦戦し、国内販売も減少している。連合内で日産の存在感低下が続けば、統合議論が再燃する可能性もある。

日産自動車の株主総会に出席したゴーン会長=6月26日

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