事業ありきの不信拭えず 石木ダム訴訟

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 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対地権者ら109人が国に事業認定取り消しを求めた訴訟で、長崎地裁は7月9日の判決でダムの「公益性」を認め、原告側の請求を棄却した。

 争点となった佐世保市への利水計画や川棚川流域の治水計画の妥当性について、国、県、市側の主張を「不合理とはいえない」などとして追認した形だ。しかし原告側はこれに納得せず、先ごろ福岡高裁に控訴した。法廷での闘いは今後も続くことになる。

 長崎県、佐世保市は石木ダム建設について国の事業認定に加え、地裁判決という「お墨付き」を得たと考えているのかもしれない。だが、強権的に事業を進めても、対立を先鋭化させるばかりだ。40年以上続くこの問題を穏当に解決する努力を怠ってはならない。

 国の事業認定は土地収用法に基づきダム事業などの公益性を審査した上で、地権者から土地を強制的に取得する「収用権」を起業者に付与するものだ。石木ダムを巡っては2013年の事業認定の告示を受けて、長崎県は、反対地権者13世帯の土地約12万6千平方メートルのうち一部農地を既に強制収用。宅地を含む残りの土地の収用手続きも進めている。

 今回の裁判は、反対地権者らが15年11月に提訴。佐世保市の水需要予測や、県が策定した治水計画の規模などが過大に評価されており、ダム建設の必要性はないと主張した。

 判決は、利水、治水の両面ともに国の基準などに基づき計画されていると認定し「事業によって得られる利益は、非常に大きい」と判断。原告側が訴えた先祖伝来の土地と生活を守る権利に関しては、近接地に代替宅地を造成しており「地域のコミュニティーをある程度再現することは不可能ではない。失われる利益は大きくはない」と指摘。事業認定した国の判断は適法と結論づけた。

 長崎県と佐世保市には全面勝訴と言える内容だったが、原告側は行政の「広範な裁量」を前提にした判決と受け止めており、「ダムありきの事業計画」との不信感は拭えていない。

 例えば、佐世保市の給水量が減少傾向にある中、将来急増するという水需要予測はやはり理解し難い。また、各地に甚大な被害をもたらした7月の西日本豪雨では、ダムの治水効果の限界も指摘されている。地権者をはじめ市民、県民に説明を尽くすことはもちろん、事業効果の再検証も必要となっているのではないか。

 中村法道・長崎県知事は知事選のさなかの今年1月末、反対地権者との直接対話に応じる考えを示していたはずだ。それから、はや半年。その約束さえも果たさず、これ以上の土地収用や、家屋などを強制撤去する行政代執行に踏み切ることなど論外だろう。