世界に誇る観光地に 小田急・箱根投資、訪日客PRに注力

 小田急箱根グループが新型海賊船の建造や駅舎改良をはじめとする総額100億円規模の大型投資を発表した。JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」で知られる水戸岡鋭治氏デザインの海賊船に、ガラス面が拡大した新型ゴンドラ-。交通の結節点やネットワークを中心に、幅広く更新する。近年、増加傾向にある訪日外国人客(インバウンド)を意識した取り組みも進め、グループを挙げて主力商品である「箱根フリーパス」の年間発売枚数100万枚の早期達成を目指す。

 同グループは2004年にホールディングス(持ち株会社)体制で設立。以後は、「日本有数の国際観光地・箱根の魅力向上に向けて、交通を中心に多様な事業を展開している」と、小田急箱根ホールディングスの五十嵐秀社長は話す。

 これまでに箱根ロープウェイ桃源台駅舎の建て替えや海賊船の建造、日帰り温泉施設の開業など、総額約155億円の投資を進めてきた。そして今回、老朽化施設や乗り物の交換・更新が重なり、総投資額は100億円となった。

 背景には、国内外からの箱根地区の人気の高まりがある。同地区を訪れる観光客は、15年5月に大涌谷周辺での火山活動が活発化した影響で一時減少したが、16年7月に箱根ロープウェイが全線で運転を再開してからは、増加基調にある。

 国内からはもちろん、インバウンド需要も増え、17年度の箱根町の観光客数は3年ぶりに2千万人の大台を超えた。箱根フリーパスの発売枚数は、過去最高の年間95万枚を達成した。

 ただ、五十嵐社長は「将来に目を向けるとレジャー志向の多様化や観光地間競争の激化、東京オリンピック・パラリンピック後の景気動向など、事業環境の激化が予想される」と懸念も示す。

 今回の投資には、さまざまな課題に対応しながら、観光地としての成長を促すことで、「世界に誇る観光地・箱根の実現を目指す」(五十嵐社長)狙いがある。箱根フリーパスの販売数年間100万枚を掲げ、観光地としての一層の価値向上を図る。

 17年度の観光客約2150万人のうち宿泊客は約500万人で、外国人客が1割強を占めるという。今回の投資では、観光情報のポータルサイトの外国語版リニューアルやパンフレットの多言語化も含み、今後もインバウンド向け取り組みを強化する計画だ。

 大型投資による国内外からのバランスの取れた集客増へ、五十嵐社長は「絶対数として外国人の利用は増やしたいが、日本の方にも、もっと利用していただきたい。全体として伸ばしたい」と期待を込めた。

箱根登山鉄道・箱根ロープウェイの早雲山駅の新駅舎(イメージ)

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