弁論大会で教わる

 神奈川県では見知らぬ小学生に声を掛けた大人が不審者扱いされてしまうような日常だった。今は五島市の奈留島で、知らない人とにこやかにあいさつを交わしている▲離島留学制度を利用して、今春県立奈留高に入学した小池明日香さん。中高一貫校に通い続けるより親元を離れる挑戦を選んだ。人と人との距離が近い島の生活を通して変わっていく自分を生き生きと語る▲先日の「社会を明るくする運動」県弁論大会。中高生が自分自身や地域社会を見つめて、発表内容を練り上げた。みずみずしい感性と鋭い問題意識がのぞく主張を聞いて、感心したり納得したり▲運動の主な趣旨は、犯罪の防止や罪を犯した人の更生に理解ある社会づくり。九州文化学園高の井添美咲さんは、このテーマに正面から取り組んだ▲犯罪被害者遺族でありながら刑務所を訪ねて加害者に寄り添う活動をしている女性の存在を知る。手紙を出して思いを尋ねた。丁寧な返事をもらった。憎しみを乗り越えることができた理由の一つは、受刑者が抱く疎外感に触れたから▲あの時誰かに相談できていたら、事件を起こさなかったのに。受刑者はそう言うという。相談に乗ることで事件を防げることもある。井添さんが女性から学んで発表したことは、改めて胸に留めておきたいことでもある。(泉)

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