躍進の10年 創成館の軌跡<下>一体 みんなで本気で応援 教職員が率先して声を

 「暑い中、みなさんを決して一人にはしない。私たちも戦う。みんなで日本一を目指そう」
 7月24日、創成館の体育館であった甲子園壮行会。校長の奥田修史(46)は言葉に力を込めた。野球に対してだけでなく「誰かが何かをやるときに、みんなで本気で応援する」は学校のモットー。その姿勢は現在、インターネットの動画サイトでも話題になるなど、野球部同様に“全国区”になっている。
 奥田には苦い思い出がある。稙田龍生(54)の監督就任前、まだ、甲子園が遠かったころの長崎大会のテレビ中継。スタンドの生徒、教職員が座ったままの様子が映し出され、こう言われた。「もう少し盛り上がってほしいですね」と。奥田は思った。「まずは教職員が率先して声をからさなければならない」
 2008年秋に稙田が就任してからの10年間を、奥田はあえて「苦しい10年」と表現した上で「いろんな改革に突っ走ってきた10年」と強調する。野球部はその一翼を担ってきた。「稙田のストイックにいちずに仕事に打ち込む姿が、多くの教職員の教えになった。生徒数(現在801人)をここまで増やせたのも野球部のおかげ」
 応援の後押しもあり、チームは2013年春に甲子園初出場。初めての聖地に、奥田は「鳥肌が立ち自然と涙が出た」。15年夏に全国1勝を挙げて校歌が響いたときは「あんなに泣いたことはない」。野球関係者以外も引きつける力が甲子園にはあると感じた。
 「校長」と背中に記したユニホームで自らアルプスの先頭に立つ奥田の姿は、今ではおなじみとなった。「仲間との友情や愛校心をぐっと高められるのが応援。勝つ喜び、負ける悔しさも存分に味わってほしい。保護者も、そうした明るい人間性を求めている」。そう信じるからこそ、やらせるのではなく、ぶれずに自らもやり続ける。
 野球の活躍、メディアでの露出に比例して、入学希望者数や進学、就職率も年々、上がってきた。だが、奥田はまだ満足していない。「これからは“何でも強い創成館”がキーワード。海外への進学も含めて、勉強でもスポーツでも、どんな夢にも応えていける学校にしていく。ギランギランに輝かせたいですね」

今春の選抜大会。智弁和歌山との準々決勝を祈るように見つめる創成館の生徒ら=兵庫県西宮市、甲子園球場

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