【水瀬きいチーム激励連載】クラッシュとアクシデントの大きな代償:スーパーGT第4戦タイ編

 レースは不測の事態、想定外の連続だ。特に2クラスが混合でレースを行うスーパーGTでは、トラブルやクラッシュなど、アクシデントが絶えない。傷ついたクルマを、夜を徹して修復するメカニック、その横で頭を抱えながら算盤をはじくチームオーナー……。そんな苦労を重ねたチームを、オートスポーツwebナビゲーターの水瀬きいが励ましつつ、その大変さを数字を目安に紹介します。

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 サリュー! オートスポーツwebナビゲーターの水瀬きいです☆

 恒例、チーム関係者のみなさまには評判サイアク(?)、ファンのみなさまにはご好評を頂いている(笑)この企画です! 今回は6月30日~7月1日に開催された第4戦タイで、クルマがお怪我をされたチームに怪我の具合と、治療費をスーパーGT第5戦富士スピードウェイでうかがってまいりました。

■損害額より気になる佐伯プロジェクトリーダーのご自宅

 まず最初のチームは、スーパーGT500クラスの8号車ARTA NSX-GTのトラブルについて、ホンダGTプロジェクトリーダーの佐伯昌浩さんにお伺いしました。

ARTA NSX-GTはエンジントラブルがありました

 8号車はエンジントラブルということでしたが……

「はい、エンジンまわりの一部から水が漏れて、最終的には水がなくなってオーバーヒートしました。レース中だったのでチームの意向もありましたし、行けるところまで行こうかという話になりました。結局ダメになってピットに入れちゃいましたけど、今回の富士、または次のSUGOでエンジンを乗せ換えようと思っていたので、タイミング的には問題ないかなというところです」

 気になるそのトラブルの損害額は!?

「エンジン1基分になるで、ウチの上物(佐伯さんのご自宅)くらいかな? N-BOX(オプションコミコミで200〜250万円程)で言いますとのクルマを10台弱程度ですね」

「だいたいレーシングエンジンは2千数百万はするので……。タイではある程度、イレギュラーもあったなかでの水漏れだったので、もう心配はしていないです」

 エンジンはさすがにお高い……。ですが、私は佐伯さんのお宅が気になります(笑)。

 続いては、24号車フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rのンジニア、米林慎一さんにお尋ねしました。

 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手がカルソニック IMPUL GT-Rと白熱したバトルを繰り広げた後、1コーナーでサイド・バイ・サイドのあと、クラッシュしてしまうシーンがありましたが、クルマの損傷はどうでしたか?

「外板がもう、ぐるっとひと通り、右側の真ん中以外は前も後ろも左もダメになっちゃいました」

「損害額はニスモさんからのサポートがあって、チームが支払っているわけではないので正確には分かりませんが、スペアがあったのでスペアに交換しました。でもまた代わりのスペアが来たので、それを結局使えるようにしなくちゃいけなかったけど、修復は1日くらいでできたかと思います。」

 オリベイラ選手の気持ちは、その日のうちに切り替わっていたそうです。個人的には接触しながらのバトルも見たいですけど、チームスタッフの方々のお話をうかがうと、そんなこと言っていられない気にもなってしまいます……(汗)。

■映像には映らなかった大打撃。Hitotsuyama Audi R8 LMSの場合

 最後はスーパーGT300クラス、Hitotsuyama Audi R8 LMSのエントラント代表、一ツ山亮次さんに伺いました。

 中継映像を見ているだけでは、リタイアの状況がまったく分かりませんでした。いったい何が起きていたんでしょうか?

「GT500のカルソニックとフォーラムエンジニアリングがストレート上でバトルをしていました。ちょうど我々が1コーナーに進入しようとしたときに、フォーラムエンジニアリングが(カルソニックとの接触で)アウト側に飛び出しました。そこでは接触はありませんでした」

第4戦タイでマシン右側面に衝突されたHitotsuyama Audi R8 LMS

「しかし、その後、(接触で)カルソニックが体勢を崩してしまい、我々の(マシンの)右脇腹あたりに突っ込んできたんです。接触直後は2~3台に抜かれたくらいでコースに戻れましたけど、ドライバーからの無線でタイヤを痛めてしまったことがわかったので緊急ピットインさせました」

「緊急でしたけど、ルーティンの作業も行ってしまおうとしたんですが、(接触の)衝撃が強かったのでギヤボックスを冷やすダクトが壊れていたし、エアジャッキも衝撃でずれていて、ピットアウトしようとした時にエアジャッキが降りなかったんです」

「何度か試してもダメだったので1回ピットに入れてコースに出したんですけど、やっぱりダクトが壊れていて、4速ギヤが百何十度という温度まで上がってしまっていたので、終わり(リタイア)にしましょうと」

 損害額は……。

「まだはっきりはわからないんですけど、約120万円程。ダメージ自体はマシンの奥深くまでは広がっていなかったので、そこまで大きくはかかりませんでした」

「サイドブレードと中のダクト類、それからサイドステップとかもカーボンの補修でいけたので大丈夫でした。エアジャッキはエアジャッキ自体じゃないんですが、そこの配管を変えたくらいです」

「タイでリタイアした直後にクルマをある程度全部バラして、ダメな部分は事前に発注しておき、日本に戻って来た時には交換用のパーツがすべて揃っている状態にしておいたんです」

「そこからメカニックが2人がかりで作業して、3日で綺麗に治ってました。今回はもう大丈夫なはず。昨日はチームの全員20人でお祓いも行きました」

 チーム全員でのお祓いは団結力の強さの証かも。そしてタイで壊れたサイドブレードはリチャード・ライアン選手が持って帰って飾るそうです☆

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