GT300予選《あと読み》:「みんなの力」で獲ったHOPPY 86 MCのPP。決勝は戦略が勝敗を分けるか

「すごく嬉しい。タカミツ(松井孝允)が初ポール獲ったときくらい。みんなで獲ったポールポジションだと思う。ここで、このパッケージでポールを獲るのはすごく難しい。大本命の“横綱”である55号車(ARTA BMW M6 GT3)に対して、うっちゃることができたのは誇りに思う」

 予選後、GT300クラスのポールポジションを獲得したHOPPY 86 MCの土屋武士監督はこう語った。JAF-GT車両、特にGT300マザーシャシーにとって、この富士は苦手とするコースだけに、このポールポジションはドライバーたちも「まさかポールを獲れるとは(松井)」と驚く結果となった。

 では、なぜHOPPY 86 MCはここでポールを獲れたのか。土屋監督によれば、「新しいアイテムはひとつもない」という。そして、ポールを獲れた結果は「今あるこのパッケージ、パフォーマンスを引き出しきることができたから。そしてドライバーがそれを引き出しやすくするという2点かな」だと要因を語った。

 今回、予選Q2に坪井翔を据えたのもそのひとつ。FTRS出身の坪井は、全日本F3を含めて富士をいやというほど走り込んでいる。一方でタイやSUGOは、松井が得意とするコースだ。こういった得意なコースでそれぞれの速さを引き出すことで、パフォーマンスを最大化したのだ。

HOPPY 86 MC

「どちら(がQ2)でも変わらなかったと思うけど、坪井の勢いもある。タカミツが確実にタイムを出せるサーキットはいくつかあるんだけど、富士の一発の出し方は、坪井がF3で何度も走っているし、経験値の差で坪井の方がちょっと可能性があると思ったから」と土屋監督はいう。そして、その引き出す力をチーム全員で作り上げたからこそのポール獲得だったというわけだ。

「いろんな意味で思った通りにいってくれて、楽しかった。みんなで絞り出したポール。このパッケージでは、富士ではみんなが絞り出さないとポールは獲れない。あとはヨコハマさんは夏場が強いし、30kg軽くなったBoPもあって、ここではガチ勝負ができると思っていたから」

■戦略はバラバラ? GT3勢も虎視眈々

 では、レースでもHOPPY 86 MCがぶっちぎるのか。ただ、混戦になるとマザーシャシーは苦しくなる。ドライバーふたりも混戦の場合は「厳しいと思う」と語っていた。ただ、マザーシャシーには戦略もある。そして、今回義務づけられている『4ストップ5スティント』というのが、HOPPY 86 MCも含め、GT300にとってはかなり重要な要素になりそうだ。

 じつは、多くのマシンが500マイルというレース距離は「3ストップで走りきれる」のだという。イコール、もう1回分のストップは戦略で幅をもたせられるというわけだ。もちろんHOPPY 86 MCの場合、混戦を避けて空いているエリアを選び、淡々とハイペースを保つことができれば、グンと勝利に近づいてくる。

 一方で、GT3勢もそこは同様だ。それぞれのマシンに得意とする部分、そして不安な部分もあり、それによって各チームが戦略を練っている様子。もちろん決勝レース前で教えてもらうことはできなかったが、例えば1回目のストップを早めにもってきて集団から意図的に離れたり、均等で割ったり、最後のスティントを短くして給油時間を減らしたりと、さまざまな方法が考えられる。また、セーフティカーの出動も考えなければならない。もちろん、HOPPY 86 MCも他のマザーシャシー勢も、タイヤ無交換作戦を考えてくるだろう。

第2戦富士を制しているARTA BMW M6 GT3

 今回のHOPPY 86 MCがポール、ARTA BMW M6 GT3が2番手、そしてGAINER TANAX triple a GT-R以下、JAF-GT勢とFIA-GT3勢が入り交じるグリッドから見ると、今までの長距離レースでは予想もつかないレース展開になりそう。そして鈴鹿に比べ、ブレーキの負担も大きいコースだけに、このあたりも勝敗のアヤになるかもしれない。もちろん暑さもだ。

 スーパーGTでは今まで誰も経験したことがない富士500マイル。どちらかというと正攻法の戦いになるかもしれないGT500に対し、GT300は非常にバラエティに富んだ戦いが展開されることになりそうだ。当然、ライバルたちが狙うのはHOPPY 86 MCの独走阻止だろう。

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