被害 語れる社会に 市民ら「偏見なくす教育を」 五島の連続講座

 カネミ油症事件に関する連続講座が4日、五島市内で開かれ、被害者自身が境遇や思いを発信しやすい社会について市民らが語り合った。教育によって偏見や差別をなくし被害者を受容、肯定する社会づくりなどを望む声が聞かれた。
 講座は4回目。同市で被害者支援などに取り組む「カネミ油症を共に考える会」(和田嘉毅代表)の会員が講師を務め、市民約20人が参加した。
 小学校教諭の平山忠明さん(59)は、被害女性の半生を描いた市民劇「沈黙の海」(2009年上演)の映像のうち、小学生のとき激しいいじめを受けたり、大人になって自殺を意図したりしたシーンを示し、被害者の苦悩を紹介。「いまだ油症認定すらされていない被害者もいて、救済は進んでいない」と訴えた。
 その後、3グループで、「自らが被害者だと世間に明かせない人が多い理由」「被害者が声を上げるため何が必要か」の2点を議論。「被害を訴えることが正当な権利との意識を社会に形成する」「市民や行政が共に偏見をなくすPRをする」などの意見があった。
 司会の辻千穂子さん(62)は「被害者の言葉には大きな力がある。事件を風化させないためにも声を大にして被害を語れる社会であってほしい」と結んだ。
 共に考える会の定例会は、市福江総合福祉保健センターで原則毎月第3木曜日。誰でも参加できる。問い合わせは市国保健康政策課(電0959・74・5831)。

油症被害を発信しやすい社会について意見交換した連続講座=五島市三尾野1丁目、市福江総合福祉保健センター

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