キリスト誕生の馬小屋表現か 五島・黒蔵地区の信仰具  潜伏キリシタンの子孫が保管

 世界文化遺産に今夏登録された大浦天主堂に隣接する「キリシタン博物館」(長崎市南山手町)は5日、五島市黒蔵(くろぞう)地区の潜伏キリシタンの子孫が保管する木箱や仏像などの一式が、イエス・キリストが馬小屋で誕生した場面をひそかに表現した信仰具と考えられると発表した。禁教期の信徒が隠れてクリスマスを祝う時に使ったとみられ、同館は「当時の具体的な信仰形態が分かる貴重な資料」としている。
 同地区には18世紀末以降に長崎・外海の潜伏キリシタンが移住。一式はその子孫の平山勇市さん(64)=同市増田町=が十数年前、黒蔵地区に住む知人から譲り受け、自宅で保管していた。木箱は幅約48センチ、高さと奥行き約27センチで、内部に複数の像を配置している。
 キリスト教ではクリスマスに、キリスト誕生の様子を表す馬小屋の模型を作る伝統がある。同館によると、木箱内の中央手前部分にある装飾品は布にくるまれた幼いキリスト、その左の小さい如来像は聖母マリア、右下の細長い金属3本はキリストに贈り物をささげる「東方三博士」を表すとみられる。像の特徴から江戸時代に作られたという。
 一式は従来、何らかの信仰具と考えられていたが、昨年夏から同館の内島美奈子研究課長らが詳しく調査。平山さんが一緒に保管する文書に、クリスマスイブの祈りを意味する「おんたいやのおらしょ」や東方三博士を示す「三人のていをう」などの記載を発見し、黒蔵地区の潜伏キリシタン組織にもクリスマス行事やその知識が伝わっていた可能性が高いという。
 木箱など一式は8月11日~9月26日、同館で開く企画展「復活の島・五島列島 潜伏キリシタンの信仰と歴史」で公開する。

五島市黒蔵地区の潜伏キリシタンの子孫が保管する木箱や仏像など=五島市増田町

© 株式会社長崎新聞社