<レスリング>【インターハイ・特集】豪雨災害に遭った八幡浜工(愛媛)が予定通り出場して初戦突破!「みなさんのおかげです」

(文・撮影=増渕由気子)

豪雨災害にもめげず、インターハイ出場を果たした八幡浜工の栗本秀樹監督(左から2人目)

 7月はインターハイに出場する高校生にとって一番大切な時期だ。7月上旬に西日本を襲った「平成30年7月豪雨」は、昨年国体が行われた愛媛県にも大きな被害をもたらした。今大会の学校対抗戦の代表校、八幡浜工の地域も浸水被害が多く、栗本秀樹監督の自宅も被害に遭った。

 7月中旬に予定されていた国体予選などは中止となったが、栗本監督は「掃除の毎日ですが、インターハイは大丈夫。練習もしてるし、準備して出場します。それより組み合わせですよ。強いところと当たることになってしまった」と苦笑するなど、ポジティブな姿勢が印象的だった。

 初戦は島原(長崎)と対戦し、51kg級の小西健太郎が勝利するも、互いに連勝できず3−3で125kg級勝負となった。そこで阿部階喜が開始40秒で劇的なフォール勝ちをおさめ、4勝目を挙げて決着。2回戦でインターハイ2連覇中の日体大柏(千葉)への挑戦権を得た。

初戦の島原戦で快勝した塩崎主将

 結果は0−7とボロボロの結果。フルタイムで闘える選手すらいなかった。栗本監督は「やれることはやりましたが、ディフェンスができたらもう少し勝負できたかもしれません。最初のアタックをディフェンスできない限り、あのようなチームには勝てない」と反省を口にした。

 もっとも、日体大柏と闘えた経験は初戦を突破したからこその権利でもある。栗本監督は「島原も強いチームだから、そこに勝ったことは評価できます。1、2年生が多いチームなので来年につながります」と前を向いた。

 災害についての影響を問うと「今回のインターハイに影響がなかったかと言われると、あったかもしれません。練習も3、4割ほど減っていましたし、部活禁止になった時期もありました。だけど、それを言い訳にしたくないんですよ。やるべきことはしてきました。日体大柏に大敗したという結果は受け止めて、またしっかり次頑張りたい」と、可能な限りで本気で仕上げてきたことを強調した。

宇和島から通う塩崎主将「インターハイを優先させてもらった」

 初戦の島原戦でチーム一の快勝を見せたのは、塩崎泰隆主将だった。常に攻撃的で休む間もなく動き回り、第1ピリオドで11−0とテクニカルフォールを決めた。だが、日体大柏では一矢報いることはできずに完敗。「主将としてふがいなかった」と唇を噛んだ。

個人戦での健闘を誓った八幡浜工チーム

 塩崎は宇和島から八幡浜に電車通学している。宇和島は今回の豪雨で被害が多かった地域の一つだ。「自宅は浸水、それ以上に(両親が経営している)お店の被害の方が大きくて…」。目の前に広がる光景を見て、「厳しいな」と現実を痛感した。

 鉄道が不通となって自力では学校にも行けなかった。家族総出で掃除の毎日だったが、塩崎は自分の想いを家族にうちあけた。「インターハイのために練習を優先させてほしい、と頼みました。僕のわがままです。キャプテンだから抜けるわけにはいかなかった」。都合がつけば、部員が宇和島まで来て掃除を手伝ってくれることもあり、練習外でもチームの結束力が高まった。

 栗本監督は「いろいろな人が協力してくれた。宇和島の先生や保護者の方たちが送迎に協力してくださいました。1勝することができてよかった。個人戦も頑張らせます」と指導に腕を鳴らしていた。

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