新日鉄住金、東京海洋大、ABB、高効率「超電導モータ」開発 船舶、風力発電用で実用化目指す

 新日鉄住金と東京海洋大学、スイスの重電大手ABBの3者は3日、新しいタイプの超電導モータを開発したと発表した。従来の線材形状の超電導材ではなく、新日鉄住金が開発した大面積の超電導バルク(塊)材を活用し、小型で軽量な大出力の高効率モータを実現した。実証試験の段階だが、船舶や風力発電機に組み込めば大幅な省エネなどにつながると期待され、早ければ数年後の実用化を目指す。

 新日鉄住金の超電導バルク材は、イットリウムなどの希土類元素とバリウム、銅から成る「QMG」と呼ぶ複合酸化物。電気抵抗がゼロのため、モータの高効率化につながる。鉄鋼で培った材料基盤技術を生かし、1980年代から次世代の新素材として研究開発を続けてきた。今回、モータ開発にこぎ着けたことで同材料の事業化に向け一歩前進したことになる。

 同日、同大の越中島キャンパス(東京都江東区)で開発モーターの実証機(出力30キロワット)を報道陣に公開した。昨年10月から各種性能を確かめる回転試験を行った結果、バルク材では難しいとされてきた長期にわたる高い磁場の安定化に成功。従来の線材コイル式モータと同等以上の利便性を確かめた。

 最大トルクは537Nmと超電導バルク材を用いたモータでは世界最高値を記録した。超電導材の冷却にはネオンのガスを用いた。

 今後はさらに大型の実証機で安全性などを確かめ、最終的にはABBが実用化を判断する。

 開発モータは、電気推進船、風力発電機のほか、電気推進式の航空機エンジンにも適用可能性があるという。

 新日鉄住金は技術開発本部の先端技術研究所で超電導バルク材の研究を推進。結晶成長制御や微細組織制御などを駆使し、世界に先駆けて高性能化や大型化を実現してきた。今回の適用材はREセンター(千葉県富津市)で結晶を成長させる電気炉などを用いて製造した。

 超電導材は大きく分けて線材とバルク材の2種類がある。線材が先行普及しているが、バルク材は線材より製造工数が少ないほか、大出力のモータを小型化しやすいなどの利点がある。

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