清宮VS櫻井、岩見VS宮台…ファームは選手同士の「物語」に深みをつける

楽天・岩見雅紀【画像:(C)PLM】

アマチュア野球界で生まれた縁やライバル関係は次のステージに

 パシフィックリーグマーケティング株式会社が運営する「パーソル パ・リーグTV」は、パ・リーグ6球団が主催するファーム対象試合をライブ配信している。

 これまでのファイターズ鎌ヶ谷スタジアム、西武第二球場、ロッテ浦和球場、舞洲サブ球場、タマホームスタジアム筑後などに加え、2018年8月7日からは、ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉での試合配信も始まり、パ6球団のファームのホームゲームが観られるようになった。

 1軍とはひと味違うファームの魅力は何か。スターの卵を発見できること。あどけない野球少年が鍛え上げられ、夢の舞台に駆け上がる過程を見守れること。そして、プロ入り前から続いていた選手同士の「物語」を、その序章を、垣間見ることができるということ。

 アマチュア野球界で生まれた縁やライバル関係は次のステージにも持ち込まれ、プロ野球の舞台でさらに複合して絡まり合う。例えば昨年、ドラフト指名を受けてプロの世界へ飛び込んだゴールデンルーキー。まだ若い彼らは現在、アマチュア時代からのライバルたちと、ファームでしのぎを削っている。

 3月11日。DeNAとのオープン戦、鎌ヶ谷スタジアム。防寒対策もばっちりなファンの体温が上昇するような場面が訪れた。日本ハムが1点を追う6回裏2死満塁の場面で、高卒ルーキー・清宮幸太郎内野手がバッターボックスに入る。

 相対したのは同じく高卒ルーキーであり、清宮が早稲田実業高校2年生のとき、秋の東京都大会決勝で5打席連続三振を献上した左腕・櫻井周斗投手(当時日大三高校)だった。

清宮&安田&櫻井は高校時代から敵→味方→再び敵に

 オープン戦とはいえ燃えないわけがないシチュエーションだったが、清宮のバットは初球のカーブに空を切ると、2球目の変化球をファウル、最後はアウトローの速球を見送り、3球三振に倒れた。わずか60秒で終わった勝負は櫻井に軍配が上がり、直後から清宮の「オープン戦19打席連続無安打」を報じる見出しが躍った。

 しかし、清宮はファーム公式戦が開幕すると、4月に4本の柵越え。5月に1軍昇格を果たしてプロ初本塁打も記録し、再びファームを主戦場とした下旬からは24試合で11ホーマー。わずか39試合の出場で15本塁打を放ち、現在は堂々、2軍全体のホームランリーダーである。

 アーチを量産する過程でも、清宮は櫻井との対峙を重ねている。4月30日のイースタン・リーグ公式戦(平塚)では、先発した櫻井から四球を選び、第2打席で犠飛も放った。日本ハムが2イニングスで5点を奪う攻撃に貢献し、一矢報いた格好だ。

 もう1人の大物ルーキー・安田尚憲内野手(ロッテ)も、櫻井にはきりきり舞いさせられていた。履正社高校3年時に出場した選抜高等学校野球大会では準優勝を果たしたが、その初戦で日大三高校のサウスポーにまったく自分のバッティングをさせてもらえず、3打席連続三振を奪われている。プロ入り後は3度の対戦で1安打2四球と、やや盛り返した。

 さかのぼればこの3人は、昨年の9月に開催されたU-18ベースボールワールドカップに日本代表として出場している。櫻井が唯一登板した南アフリカ戦で清宮は本塁打と二塁打を1本ずつ、安田は二塁打を2本放った。

 敵から味方に、プロでは再び敵へ。パ・リーグの未来を担うと期待されるスラッガー2人が所属するチームは、DeNAとの対戦を6試合ずつ残している。今季中にまだ見られそうな、見応えのある勝負だ。

六大学で対戦を重ねた楽天岩見と3人の左腕

 ルーキーながら、2軍でチーム最多の9ホーマーを放っている岩見雅紀外野手(楽天)と、彼と浅からぬ縁のある投手たちにも注目してほしい。

 岩見は慶応義塾大学在学時に東京六大学野球歴代3位の21本塁打を放っており、その相手投手には東京大学・宮台康平投手(現日本ハム)、明治大学・齊藤大将投手(現西武)、早稲田大学・大竹耕太郎投手(現ソフトバンク)らプロ入りした3人の左腕が含まれる。

 岩見と3投手の対戦は、ここまで齊藤大との1打席だけで結果は四球。現在、齊藤大は貴重な左投げとして1軍からお呼びがかかり、大竹はウエスタンの球団所属に加えて、1軍初登板を初勝利で飾ったばかりだ。

 そう考えると、次に対戦する可能性が高いのは宮台だろう。ちなみに岩見は、慶応義塾大学の先輩の白村明弘投手(現日本ハム)とも、2軍で3打席対戦している(1安打1三振)。

 アマチュア時代の関係をなぞれば浮かび上がるのは、もちろん敵味方の関係だけではない。例えば、ウエスタンで牙を研ぐオリックスのK-鈴木投手と、その先輩の比嘉幹貴投手は、同じ国際武道大学、日立製作所を経てドラフト2位指名でプロになった点が共通している。

 プレースタイルこそ、長身から投げ下ろす本格派とサイドスローで大きく違う。だが、故障の影響で苦しんだここ数年を経て、2軍でしっかりと結果を残し、再び1軍で戦力となっている比嘉の姿に、感じ入るものがあるのではないかと想像したくなる。

 若手が多いファームでは特に、同世代の選手が両軍のメンバーに固まる傾向があり、その関係性を知るファンならば思わず「おっ」と言ってしまうような再会がしばしば見られる。そうしたシーンや対戦を重ねることで、ファームは選手同士の間にある「物語」を育てる場としても機能しているのだ。

 今しか見られないその姿を、追いかけてみてはいかがだろうか。(「パ・リーグ インサイト」編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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