打ち勝って貯金増やした西武、投壊で借金背負ったホークス
2強の優勝争いもさることながら、3位から6位までのゲーム差が迫りクライマックスシリーズ進出争いも激戦となってきたパ・リーグのペナントレース。7月のチーム成績は以下の通りです。
西武 13勝5敗
OPS.850 本塁打38 防御率4.61
楽天 12勝7敗
OPS.765 本塁打24 防御率3.78
日本ハム 10勝8敗
OPS.756 本塁打18 防御率3.41
ロッテ 7勝10敗
OPS.705 本塁打9 防御率4.80
ソフトバンク 6勝11敗
OPS.801 本塁打30 防御率5.53
オリックス 6勝13敗
OPS.664 本塁打14 防御率4.28
防御率4.61と相変わらずながら月間平均得点5.94と打ち勝ち、貯金8を稼いだ埼玉西武と、月間平均得点4.94ながら防御率5点台と“投壊”し5つの借金を背負ったソフトバンク。OPS0.8超えの2チームの明暗がはっきり分かれた7月となりました。
また楽天が7月攻勢をかけ、オールスター以降は12勝2敗と10の貯金を稼ぎ8月2日時点で5位と1.5ゲーム差、3位まで4.5差と迫り、クライマックスシリーズ進出も視野に入ってきました。オールスター以降の成績だけで見ると
OPS 0.807 平均得点5.57 先発防御率 3.90 救援防御率 1.34
と投打のバランスが取れ、特に救援投手陣が整ってきました。
それでは、セイバーメトリクスの指標による7月のパ・リーグ月間MVPを選出していきましょう。
追い込まれても一発が打てる井上、チーム月間9発のうち7発を放つ
◯7月月間MVP パ・リーグ打者部門
井上晴哉(千葉ロッテマリーンズ)
OPS1.286 wOBA0.527 RC2714.75 出塁率.500 打率.400
(すべてリーグ1位)
長打率.786(リーグ2位)
打率、打点、得点圏打率、四球がリーグ1位と7月に入り覚醒した井上晴哉ですが、月間本塁打は7本。千葉ロッテの月間本塁打が9なので、実にチームの77.7%を量産したことになります。また、チーム月間塁打242のうちの22.7%にあたる55をひとりで稼いでいます。
ソフトバンクの柳田悠岐もそれに相当する打率、本塁打、得点圏打率を記録していますが、打点は井上の約半分の13。7月26日から欠場したため柳田の打席数が56と井上の90に比べて少ないこともあるのですが、
井上晴哉 打席数90
ランナーあり47(52.2%)得点圏打席数32(35.6%)
柳田悠岐 打席数56
ランナーあり21 (37.5%)得点圏打席数14(25.0%)
と柳田の前にチャンスが作れていないホークスの現状があるのです。
では、セイバーメトリクスの指標を見てみましょう。
井上の指標は長打率を除いて、全ての指標で1位となっています。特筆すべきデータとして、2ストライク後のホームランの多さがあります。月間7本のうち5本は2ストライク後の本塁打、後の2本は1ボールからの2球目を打っています。
シーズン18本のホームランのうち、61%にあたる11本が2ストライク後の本塁打で、これは12球団トップの記録です。追い込まれてからもしっかりボールを打ち上げることを意識したことで結果を残しており、メンタル面の成長もこの数値に現れているのではないでしょうか。
セイバーの指標ではディクソンの評価が1位、有原は4被弾が響く
◯7月月間MVP パ・リーグ投手部門
ディクソン(オリックス・バファローズ)
登板4 2勝0敗防御率2.74
FIP1.69 RSAA 6.24(リーグ1位)WHIP1.09 QS率66.7% K/BB3.25
勝ち星、防御率ともにリーグ1位、完投も1試合記録している有原航平(日本ハム)がNPB月間MVPの最有力候補と言えるでしょう。ただ7月の楽天躍進の立役者の一人、ハーマンも月間防御率0.00、9試合6セーブ、被打率.133とかなりの好記録ですので、対抗馬として挙げておきましょう。
では、セイバーメトリクスによる評価ではどうなるでしょうか。
有原は被本塁打4が大きくFIPに響いてしまった形になりました。規定投球回数以上の投手の中で、ディクソンがFIP、奪三振率がトップで、被本塁打0も特筆すべき数値です。ハーマンもFIP1.90、WHIP0.78、被本塁打0とかなり優秀で甲乙つけがたい成績でありました。ここでRSAA(Runs Saved Above Average)という、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標
(リーグ平均FIP-選手個人のFIP)×投球回数/9
によって比較した結果、リーグ1位の数字を示したディクソンをパ・リーグの月間MVPに推挙いたします。そして楽天7月躍進の立役者である救援投手陣の活躍も評価いたします。(鳥越規央 / Norio Torigoe)
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、統計学をベースに、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせ(2012年、2013年)などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
文化放送「ライオンズナイター(Lプロ)」出演
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