【アロンソ密着F1コラム】もう一花咲かせたい元王者。リカルドレベルの電撃移籍はあるのか

 2018年F1シーズン前半戦が終了したが、マクラーレンは依然として低迷から抜け出せずにいる。チーム上層部の迷走が加速するなか、レースで最大限の結果を出すことに集中し続けているフェルナンド・アロンソ。2019年に再び輝きを放つ道はあるのか──。

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 フェルナンド・アロンソの周囲が先週末のF1ハンガリーGP以来、俄然ざわざわとし始めた。まず最初が、同GPの木曜日に突如明らかになった「ジェームズ・キー移籍騒動」である。

 トロロッソのマシン開発を指揮してきたテクニカルディレクターのキーが、突如離脱。マクラーレンが獲得を宣言したのだが、奇妙なことにチームの公式なリリースではなく、広報担当のツイートによってわれわれは知ったのだった。どうやら移籍交渉が進まないことに業を煮やしたザック・ブラウンがマスコミに公表して、既成事実を作ってしまおうと目論んだようだった。

 それに対しトロロッソのフランツ・トスト代表は、「キーは依然としてチームと長期契約がある」と表明し、ブラウンのやり口に激怒。「キーが新しい職場で働けるようになるには、長い時間がかかることになるだろう」と、態度をすっかり硬化させた。

 ハンガロリングの週末、この件に対してアロンソはあまり饒舌ではなかった。「もちろんキーが優秀な技術者であることはよくわかっているし、早く開発部門に合流してくれることを望んでいる」と、コメントする程度に抑えていた。

 ティム・ゴスが今季低迷の責任を取らされて更迭されて以来、チームは開発責任者不在の状態が続いている。なのでキー加入にはアロンソも期待しているに違いない。しかし一方でチーム上層部の姑息なやり方に、内心腹を立てていたのかもしれない。

 ハンガリーGP自体は、アロンソのいつもながらの絶妙なレース運びで8位入賞を果たすことができた。しかしマシン戦闘力の顕著な改善が見られないまま夏休みに突入することには、アロンソも決して納得はしていないはずだ。

■注目されるアロンソの去就。リカルド移籍に伴い、ささやかれるいくつかの選択肢

 ハンガリーGP終了直後、今度は「ダニエル・リカルドのレッドブル離脱」という、とんでもないニュースが舞い込んできた。

 ここでもまたザック・ブラウンが「われわれもリカルドと交渉していた」と、得意げなコメントを発表していた。話をしていたことは事実かもしれないが、さも有力な移籍先だったかのように吹聴するのは、あまり褒められた言動ではない。

 リカルドのルノー電撃移籍は、一見するとアロンソの今後にはあまり関係ないように見える。しかしアロンソが今も現役を代表する逸材であることは確かであり、あの時代遅れのマクラーレンの車体でチームの獲得ポイントのほとんどを稼ぎ出し、フォース・インディアを選手権6位から引き摺り下ろす寸前まで来ているのは、まさにアロンソの奮闘のおかげに他ならない。

 なのでリカルド離脱に関連して、古巣フェラーリへの復帰、あるいはレッドブルへの移籍の話も出てきたりした。これまでの経緯を考えれば、正直可能性は非常に低い。しかしリカルドのルノー移籍も、ほとんどのF1関係者にとっては青天の霹靂だったのである。

 アロンソは、2019年以降の去就についてまだ明確な意思を示していない。とはいえマクラーレンが来季大きく飛躍するとは、アロンソ自身確信できていないはずだ。最近の上層部の迷走には、内心かなりうんざりもしていることだろう。インディやWECへの転身の話が出ているが、このまま輝けずにF1を去ってしまうには、あまりに惜しい才能である。

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