新聞記事や料理情報を録音 視覚障害者にCD制作 8月で100号に

 川崎市で視覚障害者向けに録音CDを制作しているボランティアグループ「水車の会」が、希望者に毎月送っている録音CDの一つ「情報ポケット水車」が今月、100号を迎える。メンバーがそれぞれお気に入りの新聞記事を切り抜いて持ち寄り、簡単な手料理情報も音声データとして提供している。「いつも楽しく聞いている」。そんな利用者の声を励みに、メンバーは録音活動にいそしんでいる。

 「今、ちょっとつっかかっちゃった。もう一度」

 川崎区堤根の市視覚障害者情報文化センターの録音室。記事を読み上げるアナウンス担当の隣には、モニター役のメンバーがアクセントや固有名詞の読み方に注意を払う。ヘッドホンを着けて音声を調整・収録する担当者の姿も。録音作業は三位一体で丹念に進められ、完成までに2週間程度をかける。

 水車の会は1964年に発足。現在、メンバーは約50人いるが、常時活動できるのは30人ほどだ。

 新聞記事を中心にしたCD「情報ポケット水車」の制作は8年前から。硬軟取り混ぜたさまざまな記事を各メンバーが持ち寄り、2時間半ほどの内容になるようニュースを選択する。鍼灸(しんきゅう)治療に従事する視覚障害者も多く、客との会話の種になるような雑多な話題を盛り込むようにしている。

 ニュースだけではない。「ばあばの簡単料理」というコーナーでは「きつね色になるまで炒める」といった表現を「3分間炒める」と視覚障害者にも分かるように改める。「このコーナーは人気で、まとめたCDも出しています。メンバーは必ず自分でも料理を作っています」と同会会長の岩崎久留美さん(67)。

 制作するCDはほかにもある。メンバーが選んだ話題の本を毎月8冊紹介する「音のしおり」は40年前からの取り組みだ。1冊につき8分間で概要と内容の一部を朗読。これまでに3千冊以上を紹介してきた。

 「えつらん室」というCDでは、メンバーが演じるミニドラマを録音したり、メンバーが訪れた観光スポットをルポしたりするコーナーも設けている。編集メンバーの北村久子さん(69)は「ミニドラマは出演希望者が多い。おばあさん役は事欠かない」と笑う。CDを利用する視覚障害者に会った際、「北村さんですね」と声で分かってくれるのが何よりうれしいといい、励みにしている。

 メンバーは明るく前向きに活動しているが、課題は後進の育成だ。「年を取ると口中雑音が出てしまいがち。気になる利用者は集中できない」と岩崎さん。同会は毎年新人講習会を行っている。岩崎さんは「音読ボランティアは絶対に必要。裾野を広げたい」と話している。

 講習会は11月6日に予定。問い合わせは岩崎さん電話090(9677)9085。

新聞記事の録音作業をする「水車の会」メンバー =川崎市川崎区

© 株式会社神奈川新聞社