『追い込み婚のすべて』横澤夏子 すんごい戦略に膝連打

 なっちゃんご結婚おめでとうございます!! 自身の入籍に自ら「追い込み婚」というアグレッシブなキャッチコピーを冠した芸人・横澤夏子。世間からは案の定、「下品」「どうせ捨てられる」等のバッシングが相次ぎました。しかしうっすら気にはなる、一体どうやって追い込んだのか。なんて疑問が独身女性の上に浮かんでは消え、浮かんでは消えかけていた頃……エッセー、発売されたじゃないですか!なんというタイミング!横澤さんたらズルイほどに売り方わかってらっしゃる! その戦法にまんまとハマり、買ってしまいましたよ。

 本書は、婚活パーティーに100回以上参加して、27歳で念願の結婚にこぎつけた横澤夏子の婚活指南エッセーだ。

「結婚相手に求める唯一絶対の理想を探し出す」「『究極の三択クイズ』で告白セヨ!」「3000円を支払ったら3000円分の連絡先を回収すること」「バチェラー&テラハで彼の恋愛観を丸裸」「老若男女が考える“いい子”は地元を大切にしている子」……。読み始めると、すごい。何がすごいって面白いだけじゃなくて説得力がありすぎること。

 例えば横澤の結婚相手の絶対条件は「関東近郊出身の次男坊」。そこには長女だった横澤が、子供の頃要領よく振る舞う妹に憧れていたことや、子どもができたら田舎のおばあちゃんと都会のおばあちゃんがいるのが理想であること、またお墓参りは遠ければ遠いほど面倒だろうと予想してのこと……。

 す、すごい。戦略がエグい。しかもそのことを婚活パーティーや紹介でさりげなく確認するため、質問も用意している。それは、

「お父さん、お母さんと仲良いですか?」なんだって!いやー、脱帽。

 また本書、出てくるアイデアが面白いんですよ。「ピーマンの肉詰め最強説」、はまぁ想像つくと思うけど(いやこれもよく考えられてますよ)、「プレゼントはイヤホンをリクエスト」って、ほんとこれすごいなぁって感心するもん。

 と、感服しまくり、膝打ちまくり(皿割れそう)、閉じた瞬間その手で婚活パーティー予約と婚活サイト登録をしたくなるほどに影響力ありまくりの本書ですが(私はしたよ……洗脳……)それにしても、どうして横澤はこんなに結婚こだわるのか。それは、意外な動機があるのです。

 コンプレックス、と言っていいのかな。劣等感とか、見栄とか。それが結婚へと突き動かしていることを包み隠さずに語る横澤。でもそれを決して暗く語ることなく、あっけらかーんと書いてるんですよね。自分を自分以上に見せない本は、読んでて気持ちがいい。応援したくなる。と、清々しい気持ちで閉じたのですが、しかし残る一抹の不安。あっ、婚活は自分を自分以上に見せまくっていたじゃん……。大丈夫か横澤。どうか苦しくならないといいけど。ま、何事も続けるだけが正解でもないと思うし!どんな形であれ、幸せに!そして私も、幸せに!

(光文社 1400円+税)=アリー・マントワネット

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