新日鉄住金と東洋製罐、軽量化した飲料用スチール缶共同開発 鋼板製造・製缶技術を融合

 新日鉄住金と東洋製罐は9日、従来品に比べ最大40%軽量化した新しい飲料用スチール缶を共同開発したと発表した。スチール製では最軽量で、既にコーヒー缶に採用された。鋼板の強度を低下させずに板厚を薄くする新日鉄住金の製造技術と、東洋製缶の製缶技術を融合させた。缶の軽量化は輸送時などの二酸化炭素(CO2)排出削減につながる。東洋製罐はこうした利点をアピールし、飲料メーカーに採用を促したい考えだ。

 開発したのはコーヒー用のショート缶(185グラム缶)。缶の内圧が外気圧より高い低陽圧缶で、ふた部分を除いた重量は16・2グラム。内圧が外気圧より低く、主に炭酸飲料用に使われる陰圧缶に比べると約40%も軽い。低陽圧缶の従来品との比較でも6%超軽量化したという。

 新日鉄住金はこのスチール缶の開発に当たり、板厚を0・17ミリまで薄くした缶用鋼板を開発した。従来品は低陽圧缶で0・185ミリ、陰圧缶で0・225ミリ程度で、板の薄さでも業界初となる。板厚を薄くすると、介在物の偏在などによって製缶時に板が破断する恐れがある。新日鉄住金は独自の製鋼技術を駆使して、介在物をできる限り低減した鋼板を開発した。

 一方の東洋製罐は、缶の側壁を引き伸ばす工程で、板厚を緻密にコントロールする技術を開発。0・17ミリの薄鋼板でも破断を起こさずに製缶することを可能にした。新しい鋼板製造技術と製缶技術の融合によって最軽量缶が実現した。

 缶の重量が軽くなると、輸送時だけでなく、缶の製造時でもCO2排出量を軽減できる。こうした利点が評価され、ダイドードリンコがコーヒー用缶に採用し、今年5月から販売を開始した。新開発缶はコーヒー缶のほか、お茶缶への適用も有望で、飲料メーカーでの採用が広がりそうだ。

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