【高校野球】日大三・大塚に見える「素材の良さ」 育成のプロが語る高校生打者の「変化」

ヤクルト、阪神、楽天でヘッドコーチや2軍監督を務めた松井優典氏【写真:岩本健吾】

本塁打激増の昨夏からさらに変化? 「全体的に選手の体が大きくなっている」

 第100回全国高等学校野球選手権記念大会第6日は1回戦の3試合が行われ、木更津総合(東千葉)、日大三(西東京)、奈良大付(奈良)が2回戦に駒を進めた。今大会は過去最多の56校が出場。そのうち、優勝候補の大阪桐蔭(北大阪)など44校がすでに初戦を終えた。昨夏は全48試合で通算68本塁打が飛び出し、2006年の史上最多大会通算本塁打数60本を大幅に更新するという特徴的な大会となったが、今年の大会はプロの目からどう見えるのか。

 ここまでは、金足農(秋田)の右腕・吉田輝星投手、創志学園(岡山)の2年生右腕・西純矢投手ら好投手の活躍も光る。ただ、名将・野村克也氏の“右腕”としてヤクルト、阪神、楽天でヘッドコーチや2軍監督を務め、鳴り物入りでプロ野球の世界に飛び込んできた若手選手も数多く指導してきた松井優典氏は、変わり続ける高校生野手の打撃に注目している。

「去年の高校野球ではホームラン数が増えました。特徴だったのは、少し小柄な選手がフルスイングしてホームランをたくさん打っていたということです。全体のホームラン数が増えたのも、そういう選手が打ったことが大きかったと見ています。ただ、今年は全体的に選手の体が大きくなっているように見えます。そして、しっかりとした体格の選手がいいホームランを打っている。それを見ていると、食育というところにかなり力を入れているんだろうという印象を受けます」

 例えば、この日の第2試合。日大三が折尾愛真(北福岡)に16-3で大勝した試合では、日大三の4番・大塚晃平が7回に左翼へのソロ本塁打を放った。松井氏は、大会前から注目されている強打者について「いい体をしています。振りの鋭さを見れば将来性はあるでしょうし、素材の良さは感じます」と高く評価する。

本塁打の大塚は「大学に行ってから力が出る選手」

 その上で「この試合では技術的な部分を判断するのは少し難しかったですが、あのホームランの場面での振りの鋭さを見ると、大学に行ってから力が出る選手だと言えるでしょう。プロですぐにというのは難しいかもしれませんが、大学で経験を積んで、打つことだけではなくインサイトベースボール(頭を使った野球のこと)も身につけてもらいたい選手。間違いなく素材はいい」と続けた。

 さらに、北福岡大会では打ち勝ってきた折尾愛真の選手たちについても、5番の野元涼内野手や3番の松井義弥内野手には可能性を感じたという。

「野元選手は今もすごい体をしていますが、1年間でかなり体重を増やしたと聞きました。第1打席にヒットを打った松井選手は、ローボールヒッターではありますが、1つの素材としての楽しみはありました。彼らを見ていても、すごく体が良くなってきている。

 去年ホームランが増えたことは1つのステップだったとして、今年は体の大きな選手が増えてきて、ホームランを打つようになっている。バントをするチームもありますが、基本的には打って勝つという方向で体を良くしようという流れがあって、それは日大三と折尾愛真のクリーンアップの体格の良さにも見て取れました。どちらにも振りの鋭さがあった。高校野球が変わってきていること自体は間違いないと思います」
 
 進化し続ける高校生の強打者。そして、それを抑え込む好投手たち。この先も楽しみな戦いが続くことは確かだ。

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