「荒川音頭」をもう一度 五島、きょう納涼祭で披露

 あの盛り上がりを、もう一度-。長崎県五島市玉之浦町荒川の住民が、かつて地域で踊られていた盆踊り「荒川音頭」を十数年ぶりに復活させた。音源などは失われていたが、当時の作詞者らに依頼し曲を再現した。11日に開く「荒川温泉湯の浜通り 納涼祭」で披露する。
 音頭は1955年制作。荒川地区の住民が地域活性化のため企画し、依頼を受けた同市の元小学校教諭、岩田洋一さん(93)が作詞した。明るい曲調で、「熱い情けもちょいと湧いて出る」「湯気にほんのり虹が立つ」など、荒川地区に湧く温泉を思わせる歌詞を盛り込んでいる。
 捕鯨などで栄えた当時は夏祭りで踊られたが、地域を離れる若者が増えるのとともに次第に忘れ去られた。実は、今回の「復活」は2回目。2000年にも地域おこしを目的に当時の郷長(75)が岩田さんに依頼し曲をカセットテープに収め直したが、数年で廃れた。
 そこで今夏、荒川音頭の再復活に尽力したのが「荒川地区活性化実行委員会」(上村孝幸会長)。イベント事業班班長の本岡晃さん(56)らが中心となり、納涼祭の目玉にしようと考えた。しかし00年のテープは見つからず、振り付けを記憶する住民もいなかった。
 本岡さんは元郷長が保管していた歌詞や楽譜を手に岩田さんを訪問。市内のシニア楽団「ブルーハーモニー」の協力も得て、再び曲を録音した。振り付けは日本舞踊を趣味としている同地区の平山美智枝さん(77)が、温泉の湯気などをイメージして新たに考案。8日夜には、住民が玉之浦町の荒川集会所に集まり練習した。
 納涼祭は11日午後6時から、同町の荒川漁港周辺で開催。荒川音頭は午後7時と午後8時10分の2回披露し、誰でも踊りに参加できる。同実行委の上村会長は「音頭をきっかけに多くの人に荒川の良さを知ってもらい、遊びに来てほしい」と話した。

復活した「荒川音頭」を踊る練習に取り組む住民ら=五島市玉之浦町、荒川集会所

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