新幹線長崎ルート 十分な貸付料の確保要請へ 長崎県知事、与党検討委員長に

 九州新幹線長崎ルートの新鳥栖-武雄温泉について全線フル規格を目指している長崎県は、財源のうち、JR側が負担する線路などの施設使用料(貸付料)を算定する上で重要な論拠となる収支改善効果を「国の試算では全線フルなら年間88億円で30年間だと2640億円になる」として、これが建設費(国試算)6千億円のうち、どの程度財源に充てられるか国に試算を求める考えだ。

 中村法道・長崎県知事は11日、与党検討委員会の山本幸三委員長と県庁で面談する予定。全線フル実現に向け十分な貸付料の確保を求めるとみられる。

 貸付料は今後の議論の焦点になる可能性がある。新鳥栖-武雄温泉の整備方式を巡っては、佐賀県は新たな財政負担増に難色を示している。与党検討委は7月、全線フルかミニ新幹線の二つに検討を絞るとの中間報告を取りまとめた上で結論を先送りした。

 貸付料は財源を考える上で重要な要素の一つだ。整備新幹線の建設費は法に基づき、JR各社から(建設、施設保有主体である)鉄道建設・運輸施設整備支援機構に支払う貸付料収入を充て、残りを国が3分の2、地元自治体が3分の1ずつ負担する。貸付料は、JR側が同機構との取り決めで収支改善効果を参考に開業から30年間支払う仕組み。

 長崎県は国土交通省試算に基づき全線フルの場合、JR九州の収支改善効果は「30年間で2640億円」になる可能性を重視。ただ、貸付料は法令に基づき、全国の整備新幹線の事業に工事量などに応じて配分される仕組みになっているのが現状。それでも長崎県は、整備新幹線で財源が決まっていないのは長崎ルートと、北陸新幹線に限られることなどから、国の責任による貸付料試算を求め、議論を前に進めたい考えだ。

 長崎県幹部は「最大の課題である佐賀県の負担が本当にどれくらいかを計算して整えていただくことが国の責任の第一歩。地元負担軽減の第一歩」とみている。

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