「避難したら戻ってはいけない」 釜石の被災者、中学生に教訓伝え

 東日本大震災の被災者と共に中学生が災害への備えを考える「防災サミット」が11日、鎌倉大仏殿高徳院(鎌倉市長谷)で開かれた。東北の被災者らが津波到達時の緊迫した様子や復興に向けた地元の現状を報告。市内の中学生26人が耳を傾けた後、地域防災で「自分たちにできること」を話し合った。

 まず岩手県釜石市の大槌湾に面した旅館「宝来館」おかみの岩崎昭子さんが、九死に一生を得た体験を語った。「地震直後に裏山に逃げた後、海に変化がなかったため、いったん戻った。再び裏山に避難する時、海の高さがあっという間に上がり、気付くと水の中で気を失った」などと生々しい当時の様子を説明した。

 岩崎さんは夫婦で犠牲となった従業員の話も交えながら、「逃げたら戻ってはいけない。戻った人間は戻れなくなる。短い時間で生死が分かれる場面があることを、覚えておいてください」などと語り掛けた。

 続いて宮城県の七ケ浜中学校の生徒らが、復興に向けた町内の取り組みや生徒自らが実践する避難所運営訓練などを紹介。「震災は忘れることができない経験ですが、私たちはふるさとを支える一員として行動していきたい」と力を込めた。

 被災者の講演や報告後、鎌倉市内の中学生はグループで感想を話し合った。生徒らは最後に一人ずつ自らの「防災アクション」を発表し、「地域の人と日頃から仲良くして、震災が起きたら一緒に協力したい」「逃げ遅れそうな近所の人に声を掛けながら一緒に逃げたい」「身を守るために災害の知識をもっと深めたい」などと表明した。

 サミットの主催は「3・11ALL鎌倉実行委員会」。被災地の医療支援を続けている市内の医師酒井太郎さんらが2015年から始め、今回で4回目を迎えた。

岩手県釜石市の岩崎さんの話に耳を傾ける中学生ら =鎌倉市長谷の鎌倉大仏殿高徳院

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