新日鉄住金、米テキサス州の油井管加工会社を現地電縫管ミルに売却

 新日鉄住金は先月末、米テキサス州ヒューストンの油井管加工会社「サザンチューブ(Southern Tube LLC)」を同じテキサス州リバティーにある現地電縫鋼管(ERW)メーカーのブーメランチューブ(Boomerang Tube)に売却した。米国通商拡大法232条に基づく貿易制裁措置で米国内ミルの精整能力増強検討が活発化しており、売却の好機と判断した。

 サザンチューブは2012年、米国のWSPヒューストンOCTG社の工場の土地、建屋、熱処理や継手加工などの設備を買収するかたちで設立。当初は、油井管用原管をブラジルにあるバローレックとの合弁会社VSB(バローレック・ソルソィンス・トゥーブラレス・ド・ブラジル)と日本の和歌山製鉄所から供給し、熱処理やネジ切り加工を行ってシェール分野での需要拡大が見込まれる米国内での供給体制強化を狙っていた。

 ただ、14年後半からの原油価格急落により、米国内で石油・天然ガスの開発需要が急激に減少。サザンチューブの本稼働も遅れていた。

 昨年からシェール分野を中心に少しずつ需要が回復基調にある中、米国通商拡大法232条によって海外からの油井管用原管供給が相当量制限。この影響で米国内ミルはネック工程の解消など能力増強の検討を活発化させており、今回ブーメランチューブとの間で売却合意に至ったもの。

 ブーメランチューブは独資のERWミルで、油井管、ラインパイプ向け両方を生産している。同社はサザンチューブの買収で、油井管の製造から熱処理、ネジ切りまでの一貫体制を構築。油井管加工の年間処理能力を40万トン近くまで高め、シェール開発向けなど現地での需要に対応する。

 新日鉄住金としては、得意分野のハイエンド製品は和歌山およびVSBで一貫製造し供給しており、サザンチューブ売却の影響は限定的と判断し今回売却に応じることとした。

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