金属行人(8月14日付)

 夏休みに大阪・吹田へ出かけた。先の大阪北部地震の被災地域でもあるが、実際に訪れてみると家の壁や道路にひび割れが走っているのが見られた。屋根などの損壊でブルーシートが掛けられた家屋もあり改めて被害の大きさを実感した▼大阪北部地震は強い揺れが一瞬で起こったことが特徴のようだ。このような短時間の地震は建物の損壊よりも家具や重量物の落下を発生させるという。物流倉庫でも荷崩れを生じさせるケースが多い。倉庫の機能として在庫商品を守ることが非常に重要で、荷崩れはそのまま損失につながる▼新日鉄住金エンジニアリングの鉄の免震装置「NS―SSB」を備えた茨木の大型物流倉庫は大阪北部地震で棚の転倒や荷崩れが発生せず高い免震性能を発揮した。日本の免震建物の歴史は古く、その象徴は各地の五重塔だろう。奈良県・法隆寺の五重塔は各層が独立した免震構造とされ、栃木県・日光東照宮の五重塔は心柱が宙に浮く懸垂式と呼ばれる免震構造となっている▼現存する五重塔は22塔とされるが大地震でも倒壊していない。免震構造の優位性を時の試練を経た各地の五重塔が実証しているとも言える。免震構造は世界でも脚光を浴び始めている。歴史が紡いだ日本製の免震構造が世界に広まることを期待したい。

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