【米国向けアルミ圧延品輸出、輸入制限後も減速せず】高付加価値製品の代替困難 米ユーザー関税込みで調達の姿勢

 米国が「通商拡大法232条」に基づき日本製アルミ製品に対して10%の追加関税を導入してから約5カ月が経過したが、アルミ圧延品の対米輸出量に大きな変化はみられていない。自動車材や缶材の一部で品目別の適用除外が始まっているほか、米国ユーザーが追加関税を受け入れてでも調達する動きが散見。今後、米国ユーザーが調達先を変更する可能性はあるものの、現地で容易に代用できない現実が改めて浮き彫りとなっている。

 3月23日に追加関税が賦課されて以降、財務省通関統計は3~6月の4カ月分が公表されている。内訳をみると圧延品の米国向け輸出総量は3月が前年同月比7・7%増の2906トンだったが、1カ月分フルに効いてくる4月は同19・5%減の2170トンに急減。減速するかと思われたが、5月は同6・9%増の2612トン、6月も同19・1%増の2784トンとなり、それぞれ前年同月実績を上回った。現時点では大きな減速感が見て取れないのが実情だ。

 米国のアルミ板市場をめぐってはアーコニックやノベリス、アレリスといった大手勢に加えて米国各地に中堅・中小アルミ板メーカーが立地している。加えてUACJやコンステリウム(オランダ)、グレンゲス(スウェーデン)といった海外勢も進出するなどメーカーの数は多い。それでも一部品種では旺盛なアルミ需要に対応し切れておらず、17年は世界各国から約30万トンのアルミ板を輸入した。そのうち8%が日本材だったことからも、市場の盛り上がりがうかがえる。

 目先の見通しは不透明ながら、「日本から米国に輸出されている製品は、高付加価値製品が中心なため現地での代用が困難。今後も大きく減速する可能性は低い」という指摘が国内圧延大手幹部から指摘されている。

 日本の対米アルミ圧延品の17年輸出量は3万1千トンで「自動車材や缶材などが米国に出荷されている」(商社筋)という。すでにUACJや昭和電工などの一部製品は品目別除外の認定を受けており、現地での代替が困難と政府も認めている。また認定が下りていない製品についても「現地ユーザーが関税を受け入れてでも調達するという姿勢が強い」(大手製箔メーカー幹部)という声や「現地ユーザーと商社のどちらが負担するのかを協議しているようだ」(大手押出メーカー幹部)という。いずれにしても早期の代用は困難なもようで、日本からの輸出量が大きく減退する可能性は低いとみられている。

 一方で、「国内のアルミ圧延品生産量全体から見れば米国向け輸出は2%弱にとどまっており、大きなシェアではない」(国内アルミ圧延メーカー幹部)という指摘もあり、その上で米国政府が検討している自動車への輸入関税に警戒感を示す。「自動車向け出荷量は30万トン超に上り、全体の15%を占める。仮に追加関税が発動され自動車産業が減速した場合、素材産業へ与える影響はアルミに対する関税以上になるだろう」(同)と警鐘を鳴らしている。

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