【野球U-15W杯】侍U-15代表、台湾に逆転勝ち 決勝打の齋藤「士気が上がる」と禁を破るヘッスラ

台湾戦で活躍した侍ジャパンU-15代表・齋藤広空【写真:Getty Images】

敗れれば決勝進出に黄信号が灯る中で貴重な勝利、スーパーラウンドは2勝1敗に

 パナマで開催されている野球の15歳以下の世界一を決める「第4回WBSC U-15ワールドカップ」のスーパーラウンドが16日(日本時間17日)始まり、日本は台湾に5-2で逆転勝ちを収めた。1-2で迎えた6回に相手リリーフ陣を攻略し、一挙4得点。敗れれば決勝進出に黄信号が灯る中、齋藤広空内野手(京葉ボーイズ)の決勝打などで終盤に試合をひっくり返した。日本はオープニングラウンドの成績も加え、2勝1敗とした。

 鮮やかな逆転劇だった。6回、1死から左翼を守る4番池田陵真捕手(忠岡ボーイズ)が右前打を放ち、続く木本圭一内野手(静岡裾野リトルシニア)が四球を選ぶと、台湾ベンチは2番手右腕を諦め、3番手右腕にスイッチ。だが日本は続く代打城下拡捕手(串木野ドリームズ)も四球を選び、満塁とすると、坂玲哉捕手(湖南ボーイズ)が死球で同点に。さらに続く斎藤の遊ゴロの間に木本が勝ち越しのホームを踏み、齋藤は併殺打を避けるために一塁にヘッドスライディング。試合をひっくり返し、ベンチの盛り上がりも最高潮に達した。

 日本はさらに2死一、三塁から杉下の左前適時打で4点目を奪うと、花田もダメ押しとなる右前適時打。7回は藤森粋七丞投手(青森山田リトルシニア)が3点のリードを守り切り、見事な逆転勝利を収めた。5回までは台湾の先発左腕リン・ユーミンのシュート回転する最速139キロの直球にタイミングが合わず、9三振を喫するなど抑えられていたが、好投を続けていた相手左腕が95球の球数制限を超えてマウンドを降りると、一気に畳み掛けた。

 決勝打の齋藤は「外野フライか内野ゴロを打てば1点入る。フライで遠くに飛ばすのは苦手なので、投手以外のところに内野ゴロを打とうと思っていた」。普段は投手も兼ねているため、所属する京葉ボーイズではケガ防止のためにヘッドスライディングを禁じられているが「完全にタイミングがセーフでも、あそこでヘッドスライディングをすればチームの士気も上がると思った」と、禁を破ってのハッスルプレー。「広い空の下で大きく羽ばたいてほしい」という願いを込め、広空(ひろたか)と名付けられた男が、文字通りパナマの青空の下で大きく羽ばたく価値ある一打で、チームを救った。

2年前には国際大会に出場「あの時の経験が生きている」

 齋藤は初戦から全試合で8番で出場。「8、9番が1、2番の役割を果たしてくれるとチームは強くなる」という清水隆行監督の狙い通りの働きを続けている。ここまで6試合を終え、12打数6安打、打率5割、4打点、8四死球。「僕は打撃よりも守備の選手だが、何とか出塁しようという気持ちでやっている」。16年には、米国で行われた「カル・リプケン12歳以下世界少年野球大会」の日本代表に池田とともに選ばれて優勝しており「あの時の経験が生きている。海外の選手は制球はあまり良くなく、動くボールもあるので、体を開いて本塁打を狙うのではなく、センターから右を狙ってライナーで強い打球を打つことを心がけている」と胸を張った。

 清水監督も「台湾は非常にしっかりした野球をする。序盤はかなり苦しんだが、劣勢の中、攻守において粘り強く戦ってくれた。6回が見事な攻撃だった。選手たちのつないでいこうという意識の結果。打ちたい気持ちを押し殺しての四球、追い込まれてからの内野ゴロと、本当によく自分の役割を考えた上で全うしてくれた」と、チームプレーに徹した選手たちを称えた。

 明日17日(日本時間18日)は地元パナマが相手。日本はまだまだ負けられない戦いが続くが、若き侍たちはつなぐ野球を合言葉に勝利を重ね、決勝への扉に手をかける。

 なお、16日を終えてのスーパーラウンドの成績は以下の通り(グループラウンドを突破した同組チームとの対戦成績も含む)。

日本 2勝1敗
キューバ 2勝1敗
米国 2勝1敗
パナマ 2勝1敗
台湾 1勝2敗
ドミニカ共和国 3敗(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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