大きく様変わりした救援事情 補強に成功したチーム、苦戦するチーム【パ編】

西武・ヒース、楽天・松井裕樹、オリックス・増井浩俊(左から)【写真:荒川祐史】

サファテ、岩嵜の不在が響くソフトバンク、首位・西武も不安いっぱい

 プロ野球の戦力は毎年変動する。これは当たり前のことだが、今季のNPBの個人成績を見ると、救援投手陣の陣容がほとんどの球団で大きく変化していることがわかる。それがチーム成績に大きな影響を与えている。2018年8月17日時点のパ・リーグ各球団の1セーブ以上、2ホールド以上の救援投手の成績を、昨年のほぼ同時期(8月20日時点)と比較しよう。

「勝利の方程式」ができている球団は、セーブ、ホールドがつく投手の数が限られている。多くの投手にセーブ、ホールドがつく球団は、救援投手陣に難があるとみていいだろう。

【パ・リーグ】

〇ソフトバンク

・2018年
森唯斗 46試1勝4敗21S5H 43回 率3.56
サファテ 6試1勝0敗5S0H 6回 率3.00
二保旭 33試0勝0敗1S3H 26回2/3 率5.40
加治屋蓮 50試2勝1敗0S20H 47回2/3 率3.21
嘉弥真新也 46試2勝1敗0S16H 22回 率1.23
モイネロ 41試4勝1敗0S12H 33回2/3 率5.08
寺原隼人 17試0勝0敗0S3H 19回2/3 率2.29
スアレス 2試0勝0敗0S2H 2回 率4.50

・2017年
サファテ 53試2勝2敗42S3H 53回 率1.02
岩嵜翔 56試5勝2敗2S31H 56回2/3 率1.75
モイネロ 21試3勝1敗1S7H 26回 率1.73
森唯斗 51試2勝2敗0S27H 52回 率3.46
嘉弥真新也 43試1勝0敗0S11H 25回1/3 率2.13
五十嵐亮太 39試6勝0敗0S10H 34回2/3 率1.30
飯田優也 18試0勝0敗0S2H 22回 率2.45

 今年のソフトバンクの低迷の最大の要因は、絶対的な守護神サファテが序盤で離脱したことだろう。代わりを任された森は21セーブとよく頑張っているが、サファテには遠く及ばない。 

 またセットアッパー陣も岩嵜、モイネロが今季はほとんど機能せず。その穴を二保、加治屋などで埋めている状態だ。2017年早々にトミー・ジョン手術で抜けたスアレスの復帰が数少ない明るい話題だ。

〇西武

・2018年
増田達至 27試0勝4敗11S2H 25回2/3 率5.61
ヒース 25試3勝0敗3S8H 23回2/3 率1.90
カスティーヨ 20試7勝4敗3S1H 74回1/3 率4.48
野田昇吾 39試0勝1敗1S14H 27回2/3 率2.93
ワグナー 36試2勝1敗1S9H 32回 率4.22
平井克典 44試2勝1敗0S12H 39回1/3 率3.43
武隈祥太 31試1勝2敗0S8H 25回2/3 率5.96
大石達也 10試1勝0敗0S2H 9回 率7.00
マーティン 5試1勝0敗0S2H 5回1/3 率1.69

・2017年
増田達至 41試1勝4敗23S3H 40回1/3 率2.68
岡本洋介 9試6勝0敗1S0H 41回1/3 率3.70
シュリッター 50試1勝2敗0S28H 50回 率1.44
牧田和久 46試1勝3敗0S25H 51回2/3 率1.57
武隈祥太 50試5勝2敗0S11H 49回2/3 率2.36
大石達也 20試2勝0敗0S4H 19回1/3 率0.93

 首位を走る西武だが、救援陣は万全とは言えない。クローザーの増田が不振。新外国人のヒースがカバーしているが「勝利の方程式」はできていない。昨年セットアッパーとしていい働きをしたシュリッター、牧田が今年はいない。急遽獲得したマーティンがまずまずの働きではある。

 西武打線は圧倒的だが、救援投手陣は不安だらけ。ポストシーズンに向けて対策が必要だろう。

松井、福山の不振でブルペン崩壊の楽天、うまい補強で“勝ち組”のオリ

〇楽天

・2018年
ハーマン 42試2勝1敗16S12H 41回 率1.10
松井裕樹 40試4勝6敗2S10H 42回 率4.50
高梨雄平 49試1勝3敗1S10H 31回2/3 率2.56
久保裕也 19試1勝0敗1S2H 20回2/3 率2.18
青山浩二 38試2勝1敗0S16H 37回 率2.19
宋家豪 25試4勝2敗0S5H 26回2/3 率2.03
池田隆英 15試1勝5敗0S4H 42回2/3 率5.91
福山博之 21試1勝2敗0S3H 21回1/3 率6.75

・2017年
松井裕樹 43試3勝1敗29S4H 44回2/3 率0.20
福山博之 46試6勝0敗5S17H 41回1/3 率1.09
ハーマン 43試3勝1敗1S28H 41回 率3.07
森原康平 34試2勝4敗0S13H 31回1/3 率4.88
高梨雄平 28試1勝0敗0S7H 27回1/3 率0.99
久保裕也 22試2勝0敗0S6H 25回1/3 率2.84

 楽天の転落の原因も救援陣の大誤算だと言えよう。昨年の松井裕樹はこの時期まで自責点はわずかに「1」だった。しかし今季はクローザーの座をハーマンに譲っている。

 ハーマンは期待通りの働きだが、昨年、絶対的なセットアッパーだった福山も大不振。チームは「勝利の方程式」の作り直しを余儀なくされている。

〇オリックス

・2018年
増井浩俊 51試1勝3敗28S9H 53回1/3 率2.19
山本由伸 44試4勝1敗1S27H 43回2/3 率2.27
比嘉幹貴 29試0勝2敗1S7H 26回2/3 率1.01
吉田一将 49試3勝4敗0S20H 48回2/3 率3.33
黒木優太 31試0勝1敗0S15H 27回 率4.00
近藤大亮 43試3勝3敗0S8H 46回2/3 率3.47
山田修義 11試1勝0敗0S7H 9回 率0.00
岩本輝 12試1勝1敗0S5H 11回1/3 率2.38
澤田圭佑 29試3勝0敗0S5H 29回1/3 率2.15
山岡泰輔 23試3勝10敗0S4H 104回2/3 率4.30

・2017年
平野佳寿 43試2勝6敗21S7H 42回1/3 率2.76
黒木優太 48試5勝2敗2S24H 47回1/3 率3.42
ヘルメン 28試1勝0敗2S6H 30回2/3 率1.47
近藤大亮 36試1勝0敗1S13H 37回2/3 率2.87
吉田一将 25試1勝1敗0S6H 23回 率3.52
大山暁史 23試1勝0敗0S4H 15回2/3 率4.60
海田智行 12試0勝1敗0S3H 10回2/3 率5.91

 オリックスはクローザーだった平野が海外移籍し、その後を日ハムからFA移籍の増井で埋めた。増井はリーグ1位の28セーブ。平野の穴を埋めて余りある活躍を見せている。誠に賢明な補強だった。さらに今季は新鋭の山本がセットアッパーとして台頭。吉田一、近藤大らと頼りがいのある救援陣を形成している。

 こと救援投手に関して、オリックスは勝ち組と言えよう。

戦力ダウン食い止めた日ハム、内が新守護神も不安定なロッテ

〇日本ハム

・2018年
トンキン 43試4勝2敗12S17H 42回 率1.93
石川直也 37試1勝2敗9S17H 33回2/3 率2.94
浦野博司 22試2勝1敗6S1H 29回1/3 率1.53
有原航平 17試7勝3敗2S1H 91回 率4.15
西村天裕 25試2勝2敗1S8H 22回 率3.68
井口和朋 26試1勝1敗1S4H 27回2/3 率2.28
宮西尚生 39試2勝1敗0S26H 31回 率1.74
公文克彦 41試2勝0敗0S9H 40回1/3 率1.34
玉井大翔 30試1勝2敗0S2H 37回2/3 率4.06

・2017年
増井浩俊 36試3勝1敗17S6H 36回 率2.25
谷元圭介 36試0勝2敗1S21H 32回2/3 率3.31
マーティン 29試0勝2敗1S18H 27回 率1.67
宮西尚生 39試3勝4敗0S19H 32回2/3 率3.58
鍵谷陽平 45試2勝2敗0S9H 43回2/3 率2.47
石川直也 34試0勝1敗0S7H 34回2/3 率3.38
田中豊樹 19試0勝0敗0S3H 19回 率3.32

 日本ハムはクローザーの増井がFA移籍し、さらに昨シーズン中にセットアッパーの谷元もトレードで中日に出した。しかし、今季は新外国人トンキンと石川がクローザー、セットアッパーを交互に担い、その穴を埋めている。宮西、公文らも渋い働きで、大きな戦力ダウンには至っていない。

〇ロッテ

・2018年
内竜也 46試2勝3敗22S7H 47回 率3.83
益田直也 50試2勝6敗3S13H 47回1/3 率3.42
シェッパーズ 22試0勝1敗1S9H 21回 率3.86
松永昂大 43試2勝1敗0S21H 28回1/3 率2.22
大谷智久 40試0勝3敗0S18H 36回 率5.00
南昌輝 35試2勝2敗0S6H 33回 率3.00
田中靖洋 30試2勝1敗0S5H 25回2/3 率4.56
有吉優樹 23試4勝2敗0S2H 70回 率3.09
岩下大輝 8試0勝2敗0S2H 7回 率2.57

・2017年
益田直也 38試0勝4敗9S6H 35回1/3 率5.09
内竜也 36試4勝1敗8S11H 35回2/3 率2.27
大谷智久 42試2勝2敗0S17H 40回 率3.15
松永昂大 37試1勝2敗0S11H 26回2/3 率3.04
有吉優樹 40試2勝4敗0S9H 41回1/3 率3.27
土肥星也 16試0勝1敗0S2H 17回1/3 率6.23
南昌輝 10試0勝0敗0S2H 9回2/3 率1.86

 ロッテはここ2年クローザーとして活躍していた益田に代わって内を抑えに指名。当初はいい働きだったが、7月は出ると打たれる試合が続いた。8月になって立ち直り、リーグ2位の22セーブ。頼りになるセットアッパーだった大谷も打たれる試合が多く、松永らの健闘はあるにせよ、救援陣は不安を抱えている。

 こうしてみると複数年にわたって信頼感のある救援投手であり続けることの難しさを実感する。終盤戦に向けて、これらの救援投手はどんなパフォーマンスを見せるだろうか。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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