ワイヤロープ、荷動き回復傾向 メーカー、コスト高で値上げ

 ワイヤロープの荷動きは、出荷量ベースでは依然として低調に推移しているものの、回復傾向にある。また、海外製品の輸入率は増加傾向にある。国内需要は全体的に盛り上がりに欠ける中、国内外問わず、ワイヤロープメーカーは値上げの動きを見せている。

 さまざまな産業で使われるワイヤロープの足元の需要動向は全国的にまばらだ。北海道ではワイヤロープの需要はほぼ横ばいで推移しているものの、人手不足の影響から工期が遅れ気味のため、ロープ需要も低空飛行が続いている。東北地方は漁業向けが一定量あるものの限定的で、林業向けは林業機械導入による省力化などに伴いワイヤロープの使用は減少している。また、土木建築は復興需要が収束に向かっており、今後は厳しい状況が予想される。

 関東圏は、五輪関連の荷動きに勢いはないが、ホテルなどの建築関連はコンスタントな引き合い。中部地区は高速道路の延長に伴う工事関連だけでなく、名古屋・三重・岐阜などで土木工事があり、重機レンタルやクレーンの動きがある。再開発に一服感はあるが、大型構造物関連も動き出すことが予想され、他地域と比較すると良好な荷動き。

 関西地区は、大阪ではホテルの建設が増えており、兵庫では道路整備や三宮駅周辺の再生事業などがあるものの、ワイヤロープの需要増にはあまり結び付いていない。中国地区は設備や公共投資関連が増加傾向だったが、西日本豪雨の影響で足元は下振れている。九州地区では、造船向けが厳しい状況。

 需要に濃淡がある中、高速道路における正面衝突の事故防止策として、ワイヤロープの防護柵の設置への期待感が全国的に高まっている。

 価格に関して、素材価格の値上げに加え、副資材・燃料および輸送費の上昇などを背景に、安定供給体制の構築のため、国内ワイヤロープメーカー各社は現行価格から6%以上の値上げを実施している。流通加工業者もユーザーへのアナウンスを行っている最中だ。一方、海外ワイヤロープメーカーに目を向けると、一部の海外メーカーを除き、韓国メーカーを中心に春先から値上げアナウンスを行っているものの、販価是正に苦戦している状況。足元、国内外問わず、本格的な価格是正に乗り出しており、ワイヤロープの市況は一段と強まっていきそうだ。

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