“ふたつのリーグ”からみるF1タイトル攻防の行方【今宮純の2018年シーズン前半戦総括】

 まもなくサマーブレイクも終わりF1第13戦ベルギーGPが開幕する。今回はF1ジャーナリストの今宮純氏が2018年シーズン前半戦を総括。シーズン後半に向け“チャンピオンズリーグ”と“Bリーグ”のふたつのタイトル争いの行方を分析する。

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 地球規模で熱波・猛暑が続く8月、サマーブレイクのF1界でホットニュースが流れた。8月3日にダニエル・リカルドの『ルノー移籍』⇒14日にフェルナンド・アロンソが『2019年F1不参加』⇒16日にはカルロス・サインツJr.の『マクラーレン移籍を発表』。

 後半戦これから数年に一度……いや、それ以上のチーム/ドライバー変動が勃発する。レギュラー・コンビが決定済みは2チーム、シートが決まっているドライバーは6人だけだ。

 2018年F1シーズンの12戦を終えた時点で、データが語る後半戦、そして戴冠への攻防をとりあげたい。前半での1位と2位得点、後半の追加点、その結果を一覧すると直近の4シーズンで“逆転V”が3度起きた(17年、16年、14年)。前半戦のポイントリーダーがチャンピオンシップを制覇したのは15年の一度きりだ。

☆2017年
前半戦 1位 セバスチャン・ベッテル:220点/2位 ルイス・ハミルトン:213点

後半戦 1位 ハミルトン:363点(追加150点)/2位 ベッテル:317点(追加97点)

☆2016年
前半戦 1位 ハミルトン:217点/2位 ニコ・ロズベルグ:198点

後半戦 1位 ロズベルグ:385点(追加187点)/2位 ハミルトン:380点(追加163点)

☆2014年
前半戦 1位 ロズベルグ:220点/2位 ハミルトン:191点

後半戦 1位 ハミルトン:384点(追加193点)/2位 ロズベルグ:317点(追加97点)

 この数字データを分かりやすく言えば後半“カタメ勝ち”した者がV奪取、タイトル獲得率は75%になる。17年ハミルトンは8戦4勝、16年ロズベルグは9戦4勝、14年ハミルトンは7戦6勝。このハイ・アベレージが逆転タイトルにつながった。

 2018年は1位ハミルトン213点/2位ベッテル189点から後半戦へ突入する。両者の差は14年の『-29点』よりも小さく、17年の『-7点』よりは大きい。ふたりが『5冠王』めざす後半戦、固め勝ちするのはどちらか。両ドライバーとも勝ちきれなければ、F1グランプリ通算997戦目となる最終戦アブダビGP夜空の下で決まることに……。

■トロロッソ・ホンダを含んだ混戦模様の“Bリーグ”争い

 今年のF1はメルセデス、フェラーリ、レッドブルのトップ3チームが『チャンピオンズ・リーグ』と呼ばれ、それ以外……つまりミドル以下の7チームは『Bリーグ』と表現されるようになった。

 視点をその“Bリーグ”に変えてみよう。現在ランク4位ルノー:82点、5位ハース:66点(-16点)、6位フォース・インディア:59点(-7点)、7位マクラーレン:52点(-7点)、8位トロロッソ・ホンダ:28点(-24点)、9位ザウバー:18点(-10点)、10位ウイリアムズ:4点(-14点)。

F1“Bリーグ”のチャンピオン候補はニコ・ヒュルケンベルグ

 ファクター3にはチームのキャラクター(DNA)が出る。フォース・インディアはマシン戦力を補う確かな戦略をつらぬき、コミュニケーションにも一体感がある。ザウバーも前半戦半ばから、新人ルクレールがクレバーなレースを見せチーム戦意が上昇中。

 ファクター4、終盤にきてパワーユニットのローテーションで注目はトロロッソ・ホンダ。既に使用済みのコンポーネンツ基数が最も多く、新バージョン投入とペナルティ対応を鑑み重点レースを定めて上位を狙う。

 ファクター5のタイヤ管理ではフォース・インディア、ハース、マクラーレンにいる日本人エンジニアたちが手腕を発揮。具体的にはGPごとの綿密なドライ3スペック配分や、フリー走行からすべてチェック走行するきめ細かさ。タイヤ設計(作る側)に携わってきた彼らならではの経験と知見にほかならない。現在4位ルノーは前半このタイヤ・マネージメントに苦しんできただけに、この<ファクター5>がBリーグの行方を左右するか。

――最後に後半9戦の“キーイベント”を。春から再び秋9月30日に変わった第16戦ロシアGPを挙げる。マレーシアGPが消えて今年は日本GP直前スケジュールだ。15年10月に開催されたときは低温15度前後、後半戦では最も寒い低温コンディションが予想され、秋のソチは降雨日も増える。

 ちなみにメルセデスにすれば最も苦戦していた3連敗セパンがなくなり、4連勝中ソチが終盤にあるのは望ましいこと。そのロシアから連戦の日本GPへ。この“露・日移動”は後半日程でもっとも長距離で環境も変化、チームもドライバーも最高の真価が問われる――。

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