自炊生活を送る侍女子代表 一番の料理上手はエース里、投球との共通点も!?

マグロと大根の煮物とマグロステーキをスタッフに差し入れする里【写真:石川加奈子】

「チームワークを高める」ための自炊生活、見事な腕前は「SATO’S キッチン」と呼ばれるほど

 第8回WBSC女子野球ワールドカップ(22~31日、米国フロリダ)で6連覇を目指す侍ジャパン女子代表が渡米後、自炊生活を送っている。

 ロサンゼルス経由で16日夜にフロリダ入りし、翌日から自炊を開始。17日の昼食は、選手が部屋ごとにカレーライスを作って食べた。総勢20人の選手は、17~29歳と年齢層は幅広く、料理を全くしたことがないという選手もいたが、異国の地で和気あいあいと共同作業を楽しんでいる。

 フライパンと鍋を片手に、野菜炒めや餃子スープ、ステーキを選手に振る舞った橘田恵監督は、自炊の狙いについて「チームワークを高めること」を理由の一つに挙げる。「役割分担をして、自分の役割を全うする。さらに手助けが必要な人を見つけて、手助けする」と野球につながる共通点を認識している。

 選手で一番の料理上手は、間違いなく里綾実投手(愛知ディオーネ)だろう。目の前にある食材を見て、ひらめきで調理法を決め、手際よくパパっと仕上げる。その見事な腕前で“SATO’S キッチン”と呼ばれるようになった。

 残り物のトンカツとチャーハンも里の手にかかれば、違うごちそうに変身する。トンカツはキャベツと一緒に煮て卵でとじてカツ煮に。さらにその少し残った汁にチャーハンと牛乳を投入して、味を整えてリゾットにといった具合だ。

料理と投球に共通する「準備」と「対応」

 ふだん自炊生活だが、買い物に行く時間があまりないため、料理する機会はそんなに多くないという。それでも「(食材が)いろいろあると思いつくんですよね」と笑う。マグロは刺し身にした後、一部はステーキにし、残りは大根と一緒に煮た。ステーキは外側を炙っただけのレアで、その火入れの加減が抜群。煮物の大根にはしっかり隠し包丁が入れてあった。即興ながら手抜きのない心のこもった料理を裏方スタッフに差し入れする心遣いも素晴らしい。

 料理している姿に接すると、投球との共通点があるように思えてきた。野球をしている時に里がよく使う言葉は「準備」と「対応」。周囲の状況を積極的に情報収集して、試合までにしっかり準備をすること、試合になれば、様々な状況に対応すること。この2つを積み重ねて、14、16年と2大会連続でワールドカップMVPを獲得した。

 料理は、まさに準備と対応の連続だ。目の前の食材にどう対応するかを瞬時に検討し、下準備を怠らずにていねいに調理する。里の料理の腕前に接し、世界一の投手になった過程を見た思いがした。

 チームの自炊は20日で終了して大会モードに突入する。22日開幕の大会では日本の6連覇と自身の3大会連続MVPが懸かる。どちらも前人未到の大記録。料理で見せた手際の良さと丁寧な仕事で、日本を敵対視する国々をきれいに料理してほしい。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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