ボルボ V90 クロスカントリー D4 試乗|ディーゼルステーションワゴンは最高の“GTカー”

[VOLVO V90 Cross Country D4 AWD Summum ”奥の細道”試乗]

ボルボの真骨頂であるステーションワゴン「V90 クロスカントリー D4」を試す!

2016年に登場したSUV、XC90を皮切りに次世代モデルへの刷新が行なわれているボルボ。最近ではXC60やXC40と言ったクロスオーバーSUVが大ヒット中だが、やはりボルボの真骨頂と言えばステーションワゴンだろう。240、740/760、850、V70と過去のモデルを振り返っても、パッと頭の中にイメージされるのはステーションワゴンの姿である。

VOLVO V90 Cross Country D4 AWD Summum

そんなボルボのステーションワゴンのフラッグシップが、V90/V90クロスカントリー(CC)だ。これまで2リッターターボの「T5」、2リッターターボ+スーパーチャージャーの「T6」、2リッターターボ+スーパーチャージャー+モーターのPHV「T8(V90のみ)」とガソリン車のみの設定だったが、新たに2リッターディーゼルターボ「D4」が追加設定された。

ボルボは2017年に電動化のロードマップを発表済みで、ディーゼル需要が高いのも事実である。すでに「次世代ディーゼルの開発は行なわない」と語るが、実際の販売現場でのディーゼル需要も高いため「Drive-Eの進化は今後も続けていく」とも。恐らく、今後は電動化パワートレインとの組み合わせも登場するはずだ。

2リッターディーゼルターボ「D4」のスペックは、190ps/400Nmと、同エンジンを搭載した先代XC60から変更はないものの、年を追うごとに厳しさを増す排ガス規制に対応するために「尿素SCR(選択還元型触媒)システム」を追加。VWのディーゼル不正問題以降、日本でもディーゼルエンジン車の認可に慎重な話を聞くが、そんな中での発売は「信頼の証」と言ってもいいだろう。

フォトギャラリー>>V90 クロスカントリーD4の内外装デザインや、松島などドライブで立ち寄った絶景を見る

D4搭載のV90クロスカントリーでショートトリップへ!

宮城・松島[VOLVO V90 Cross Country D4 AWD Summum ”奥の細道”試乗]

今回、このD4搭載のV90CCでショートトリップに出かけてきた。XC90以降の「新世代ボルボ」は、従来のボルボと違って乗った瞬間から「おっ!!」と感じる“先味”の良さがあるが、ボルボの真骨頂を知るには長距離を走り、後からジワジワ来る“後味”の良さを体感するのが一番である。とはいえ、筆者はすでに

新千歳空港(北海道)~羽田空港(東京)まで約1300kmの旅

を行なっているので、それ以下なら「ちょっとそこまで」の気分だ(笑)。

目的地は仙台。T編集長のことなので、牛タンや牡蠣、ずんだ餅、笹かまぼことなどを食べ歩く「仙台グルメ」堪能の旅だろうと予想していたが、「何をおっしゃる、今回はV90にふさわしいインテリジェンスな旅です」と。T編集長、熱ある?(笑)。

東北道で仙台を目指す!「機敏でスポーティだが穏やかさも」

[VOLVO V90 Cross Country D4 AWD Summum ”奥の細道”試乗]

さて!東北道で仙台を目指す。ガソリン車「T5」は性能面に関しての不満はないが、V90のキャラクターに対して軽快すぎる特性やサウンドなどが気になっていた。

しかし、D4は常用域で400Nmを誇るトルクを活かし、1.9トン近いボディを軽々走らせる絶対的な力強さはもちろんだが、D4の幅広いトルクバンドを有効に使い、無暗にシフトダウンさせない8速ATの制御プログラム、そしてディーゼルエンジンとしてはかなり機敏でスポーティだが、ガソリン車と比べた際の穏やかさなどは「骨太だけど癒し系」と言ったV90のキャラクターにマッチしていると思う。

宮城・松島[VOLVO V90 Cross Country D4 AWD Summum ”奥の細道”試乗]

シャシー系は公式な変更アナウンスはないものの、実際に乗ると初期モデル(T5)よりも確実に良くなっている。今回のモデルは、コイルバネ仕様で走行700kmちょっとの“ド新車”ながらも、初期モデルで10000kmくらい走行した時に感じたしなやかさと動的質感が備わっている事にビックリ。更に言うと、初期モデルのコイルバネ仕様は常用域での段差乗り越え時のショックやバネ下がドタバタする感じが気になっていたが、新型はそのネガが薄まっている。

ちなみにガソリン車とディーゼル車の重量差は20kg。これが走りの良さに影響しているのか、それともボルボ特有(!?)の数値に現れないランニングチェンジなのか、それとも生産精度が上がったのか、謎は深まるが、良くなっているのは事実である。これまでT5は「断然エアサス仕様!!」と思っていたが、D4はそれを改める必要があると感じた。

松島の絶景にも上手に溶け込むボルボデザインに「ボルボや、ああボルボや ボルボや(笑)」

レポーターの山本シンヤ氏[VOLVO V90 Cross Country D4 AWD Summum ”奥の細道”試乗]

仙台に到着、西部警察・仙台ロケで一部のマニアには有名なロケ地の一つである「日産サニー宮城(現日産サティオ宮城」を通りながら向かった先は「松島」。日本三景の一つとして数えられており、あの松尾芭蕉があまりの絶景に句が思い浮かばず「松島や ああ松島や 松島や」と詠んだ場所としても有名な場所である。そう、今回の旅テーマは「松尾芭蕉めぐり」だ。

ちなみに輸入車の多くは個性的で味濃い目なデザインが多いが、北欧デザインの特徴でもある「誇張ではなく調和」、「クリーンでシンプル」、「素材感を活かす」を上手に盛り込んだボルボデザインは、松島の風景にも上手に溶け込んでいるように感じた。そこで一句「ボルボや、ああボルボや ボルボや(笑)」。

続いて山形へ!ワインディングのような道でステーションワゴンの良さを実感

宮城・松島[VOLVO V90 Cross Country D4 AWD Summum ”奥の細道”試乗]

続いて向かった先は、山形県山形市の「立石寺(りっしゃくじ)」。山寺の通称で知られる天台宗の寺院だが、芭蕉がここで「閑さや 岩にしみいる 蝉の声」を詠んだことでも有名である。高速道路と一般道を合わせて約100kmの道のりだが、目的地まで乗り換えなしにダイレクトに辿り着けるクルマ移動のメリットを改めて実感。

高速道路を下り、ワインディングのような道を走行。V90より55mm車高が高いが、SUVより低重心のメリットはこういう場面で活きる。最新のSUVはロールを上手にコントロールして乗用車感覚を演出しているものの、物理の法則には逆えない。やはり、クルマの基本はセダン/ワゴンだな……とシミジミ。ただ、目を三角に走ると言うより6~7割の力でサラッと流して走るのが似合う。

山形・山寺立石寺[VOLVO V90 Cross Country D4 AWD Summum ”奥の細道”試乗]
山形・山寺立石寺[VOLVO V90 Cross Country D4 AWD Summum ”奥の細道”試乗]

約1時間のドライブで到着。ふもとの駐車場に車を止めて入山。頂上の奥乃院までは1050段の石段(汗)。灼熱の暑さと運動不足がカラダを痛めつけるが、「途中リタイヤは原稿を書かずに逃げるのと同じ」と自分に言い聞かせながら、頂上まで登り切った。

昔から「石段を1段2段と登ることで煩悩が消滅する」と信仰されているそうだが、確かに登っている最中はあまりの辛さに何も考えることができず……。下山後、クルマに戻ってエンジンを始動して一句、「閑さや 体にしみ入る D4の音(字余り)」。

火照った体をV90CCのベンチレーションシート&マッサージ機能付のフロントシートが癒してくれる。そして、こういう時こそアクセル/ブレーキ操作に加えてステアリングも自動操作して前車に追従する運転支援システム「パイロットアシスト」は、疲れた体には本当にありがたいと感じた。

V90クロスカントリーは最高の「GTカー」

VOLVO V90 Cross Country D4 AWD Summum

筆者は以前からボルボV90CCは最高の「GTカー」だと思っていたが、D4の搭載でその濃度は更に増した。JRのCMではないが「そうだ〇〇へ行ってみよう」と言う気にさせてくれるモデルなのだ。

ちなみに燃費は全く意識せずに走って13.5~14km/Lくらいだったが、軽油の安さはともかく、1タンクでの航続距離の長さが魅力の一つだろう。ちなみに、普段は長距離ドライブ=食レポが必至のオートックワンだが、今回の我々の胃袋もディーゼル並みに省燃費(!?)。でも、取材が全て終了した後にシッカリ「牛タン」をいただきましたとさ(笑)。

[Text:山本シンヤ/Photo:茂呂幸正]

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