核廃絶、世界で訴え ピースボートが横浜帰港

 広島、長崎の被爆者らが世界各地で核廃絶を訴えるピースボート「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」の客船が21日、横浜港に帰港した。ピースボートが運営団体に加わる国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が2017年にノーベル平和賞を受賞後、初めての船旅。106日かけて15カ国18都市で原爆の恐ろしさを証言し、核兵器の非人道性を訴えた。

 外務省に委嘱された「非核特使」として参加した被爆者2人らは同日、横浜港大さん橋国際客船ターミナル(横浜市中区)で会見。3歳の時に広島で被爆した上田紘治さん(76)は「一人でも多くの人に被爆の実相を理解してもらうことが、平和につながる一番の近道だ」と証言活動の意義を強調。その上で「2020年までに核兵器を廃絶するためには若い人たちにお願いするしかない。今回の船旅で若者たちに受け止めてもらえたことが一番うれしい」と力を込めた。

 1歳の時に長崎で被爆した倉守照美さん(74)は「外国で核兵器禁止条約を訴えると、日本はどうなのかと逆に聞かれた。まずは自分の国から署名や批准を求めたい」と意気込んだ。今回の船旅は「長崎を最後の被爆地に」との思いで条約の重要性を各国で訴え続けた。「微力だけど無力じゃないという思いで続ける証言活動を、若い人にも継承してもらいたい」と言葉を紡いだ。

 ICAN国際運営委員でピースボート共同代表の川崎哲さん(49)は、訪問国・地域にノーベル平和賞のメダルと賞状を携え、核兵器禁止条約への署名・批准を強く働き掛けたことを報告。「各国でこれまでにない手応えを感じた」と話した。

 ピースボートがチャーターした客船「オーシャン・ドリーム」(3万5265トン)は被爆者や若者たち約千人を乗せて5月8日に横浜港を出港した。

「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」から帰港した被爆者と、ピースボートの共同代表ら=横浜港大さん橋国際客船ターミナル

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