自閉症の子どもと家族を支援 市民有志がNPO法人 「助け合う地域つくりたい」

 長崎県佐世保市で重度の自閉症を抱える女性の家族を支援している市民が、NPO法人「カラフルビーズ 自閉を抱く会」を設立する準備を進めている。自宅で取り組む療育プログラムを使いながら、自閉症の子どもがいるほかの家庭にも地域で支え合うネットワークの輪を広げていく。

 市内に住む奥平マリさん(52)は、次女の佳子さん(23)が1歳半健診で自閉症と診断された。佳子さんは、積極的に言葉を発したり、相手と目を合わせたりできず、13歳のときには突然大泣きをしたり、暴力的になったりする行動が悪化した。

 困り果てた奥平さんは米国の心理学者が考案した自閉症の療養プログラム「サンライズ」を知り、2013年に米国で実践方法を習得。プログラムは、自閉症の子どもに寄り添いながら、自宅で遊びなどを一緒に楽しむ「ジョイン」という考え方を重視。当時18歳の佳子さんの行動は次第に落ち着いたが、1日最低8時間は誰かが一対一で向き合う必要があり、日常生活が制約された。

 奥平さんは2年前に知人を介し、市内の久野妙子さん(51)に協力を依頼。久野さんが友達ら約10人を集め、交代で佳子さんと向き合った。これまでの約2年間で佳子さんは簡単な言葉を話すようになったほか、動作で意思を伝えることができるまで成長した。

 奥平さんや久野さんら中心メンバーは、佳子さんの事例を広く知ってもらい、自閉症の子どもがいる家族が孤立しないよう地域でサポートするNPO法人を設立することを決意。プログラムに参加した長崎国際大の細野広美助教(臨床心理学)は「自宅で療養する点が興味深い。地域で支えるネットワークづくりは重要」と評価する。

 7月下旬にはNPO設立の勉強会を開いた。佳子さんは自閉症特有の反復行動で、バケツに入ったカラフルなビーズを手でかきまぜる。こうした行動をみんなで理解しようという願いを込め、NPOの名称を決定。8月中の設立を目指すことも決めた。久野さんは「自閉症の子どもと接する貴重な体験を通じ、相手を理解することの大切さや、自分たちが当たり前でないことに気付かされた。NPOの活動を通じ、助け合う地域をつくりたい」と意気込んでいる。問い合わせはカラフルビーズ(colorfulbeads.jihei@gmail.com)。

自閉症の子どもがいる家族を支援するNPO法人の設立を準備する久野さん(右)ら。奥平佳子さん(右から2人目)の成長を紹介しながら活動する=佐世保市

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