ヤマハ中須賀「怪我を利用して違う走りを」。もてぎ戦で逆境のなか見せた驚異の適応能力

 鈴鹿8時間耐久ロードレースでの負傷の影響が残るなか、全日本ロードレース選手権第6戦に挑んだ中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)。万全とは言えない状況のなか、チームメイトの野左根航汰とTeam HRCの高橋巧との三つどもえ戦を制して優勝を飾った。

■右肩の痛みで3周のアタックが限界だった予選

 7月28日に行われた鈴鹿8耐のフリー走行中、中須賀はペースの遅いマシンに引っかり転倒。その際に右肩を負傷し、決勝レースへ出場することができなかった。鈴鹿8耐から約3週間のインターバルで行われた全日本ロードJSB1000クラスの第6戦も、中須賀は怪我の影響が残るなかでの戦いとなった。

 迎えた予選、中須賀は1分48秒724を記録して2番グリッドを獲得。1分48秒564でポールポジションを獲得した野左根航汰とはわずかコンマ2秒差だった。

 2番グリッドを獲得した中須賀だが、アタック中は右肩の負傷の影響が大きく、予選Q2では3周目以降はアタックすることが難しい状況にあったという。

「自分の状況を踏まえると、フロントロウに並べられたらいいな思っていたし、正直もっとダメだと考えていました」と中須賀。

「予選は3周集中して走りきった感じです。4周目もアタックしたかったけど、右肩が痛くて力が入らない状態だったので、残りの2、3分は流すしかありませんでした」

 そんな予選中、中須賀は力が入りずらいことで速くなったセクションもあったとも語る。

「(負傷の影響で)右コーナー全部が辛くなっていますが、怪我の功名か、いつもとは違う場所で速く走れたりしています。僕はブレーキングが得意なんですけど、ブレーキをかけすぎて遅かったコーナーがスムーズに走れていて、速いセクションがあります。特にファーストアンダーブリッジからS字カーブへの入りがうまく乗れているのかなと」

「決勝では、そこでしっかり体を休めて、他のセクションで攻めていくという形になってくると思います。残り5周か3周でスパートをかけていきたいですね。怪我を利用してまた違う走りを見つけられたらと思います」

■悪コンディションで見せた中須賀の適応能力

 迎えた決勝日。朝のウォームアップ走行ではライバルの高橋巧が1分48秒820でトップに。野左根が2番手で1分48秒900と上位2台が1分48秒台に入れていた。一方、中須賀は3番手につけるも、1分49秒176で48秒台に入れられず、決勝レースは高橋巧と野左根の一騎打ちになるのではないかとの見方が強かった。

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)
ヘルメットのバイザーを上げて涙をぬぐう姿も

 次戦はオートポリスでの2レース制。もてぎ戦で肩を酷使したことにより、負傷の影響が長引く可能性もある。最後にオートポリスまでに右肩は回復するか聞くと中須賀はこう答えた。

「オートポリスは、右コーナーも多いレイアウトですし、曲がり込むコーナーが多いのでもう少し負担はかかると思います。だけど、まだ本戦まで2週間ありますし、右肩も回復していると思うので、万全な体制でオートポリスに挑みたいです」

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