FFG・十八銀 統合承認 借り換えでシェア65% 公取委「競争環境は維持」 来年4月

 公正取引委員会(公取委)は24日、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)と十八銀行(長崎県長崎市)の経営統合計画を承認したと発表した。統合後の中小企業向け長崎県内融資シェアは約65%と高水準だが、公取委は公正な競争環境が維持されると判断した。FFGと十八銀が2016年2月に統合に基本合意して以来2年半。長期に及んだ異例の審査が終結した。

 十八銀は19年4月にFFGの完全子会社となり、20年4月にFFG傘下の親和銀行(長崎県佐世保市)と合併する。十八銀の上場廃止に伴い、長崎県内に本社がある東証上場企業は姿を消す。

 FFGの連結総資産(18年3月末時点)は20兆円で国内最大の地銀グループ。統合後は単純合算で約23兆円に達し、横浜銀行(横浜市)と東日本銀行(東京)を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループの18兆6千億円を引き離す。

 FFGと十八銀が統合すれば長崎県内中小企業向け融資シェアは約75%に上る。公取委は、競争が制限されて取引先に金利上昇など不利益をもたらす恐れがあると問題視。両行はシェア引き下げのため、競合する金融機関へ借り換える意向がないか長崎県内全取引先に照会し、計1千億円程度を確保した。不当な金利引き上げがないように監視体制を築くことも公取委に提案した。

 公取委は長崎県内を8地域の経済圏に分けて影響を分析。長崎県内企業や競合金融機関に聞き取り調査もした。その結果、債権譲渡すればシェアは約65%に低下し、競合金融機関が一定のけん制力を持ち、競争は実質的に制限されないと判断した。都内であった会見で公取委は「中小企業に借りる先の選択肢があるかどうかが審査の主眼だった」と説明した。

 柴戸隆成FFG社長は同日、福岡市内のFFG本社で会見し、「取引先や地域が抱える課題に一緒に取り組み、企業の付加価値や生産性の向上に貢献し、それが地域経済の活性化、銀行の成長にもつながる好循環を実現したい」と強調した。

 同席した森拓二郎十八銀行頭取は「地元のために最大の貢献ができる銀行を親和と共につくる」、吉澤俊介親和銀行頭取は「両行の行員が心一つに地元の期待を超えるいい銀行をつくりたい」とそれぞれ意欲を語った。

 ■解説/外堀埋められた公取委

 ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と十八銀行が現状のまま統合すれば、長崎県内中小企業は借り入れ先の選択肢が減ってしまう-。こう問題視してきた公正取引委員会は一時、企業統合審査では史上初の排除措置命令を出す構えも見せていた。それが一転、承認に転じたのは、債権譲渡(借り換え)でシェア引き下げにめどが立ったからだ。約10%の下げ幅を公取委は「それなりのインパクト」と評価した。

 公取委のアンケートに応じた長崎県内中小企業の4割弱は、もし統合後の新銀行が金利を引き上げれば、他からの借り入れを検討すると回答。競合する他の金融機関も軒並み債権引き受けに応じた。これを取引拡大の契機と捉え、公取委は競争が維持されると判断した。

 債権譲渡は遅くとも統合後1年以内に完了する予定。その間、新銀行が不当な金利引き上げや貸し渋りをしないかという懸念に対し、FFGと十八銀は第三者機関による監視を提案。公取委に状況を定期報告し、金融庁の検査・監督も受けることで、その実効性が認められた。

 金融庁が暗に統合を後押しする中、金融機関はたとえ競争相手の肥大化に手を貸す形となっても、協力せざるを得ないという事情が透けて見える。金融庁の有識者会議が、公取委と同庁が連携するよう提言し、官房長官と金融担当相も同調。地元政財界も統合実現を要望した。そして、高い独立性を持つ「ほえる番犬」(杉本和行公取委員長)も外堀を埋められた格好となった。

公取委の統合承認を受けて会見する(右から)十八銀の森頭取、FFGの柴戸社長、親和銀の吉澤頭取=福岡市、FFG本社

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