弾き語りで47都道府県を制覇 miwa「待っている人のために」

 ギターをかき鳴らしステージに立つシェリル・クロウにくぎ付けになった15歳の時、「ギターを弾いて歌う人になる」と覚悟を決めた。アルバイトでためたお金で2年後に手に入れた“分身”。見よう見まねでコードを押さえ、その表現を自分のものにした。

 将来を見据え大学受験に打ち込む周囲を見て「音楽でプロを目指すなら、今しなくてはいけないことがある」と発起。東京・下北沢のライブハウスに電話をかけて出演を交渉した。思いが通じ、17歳で踏んだ初舞台。緊張でうまくギターを鳴らすことができなかった。

 ♪ギリギリだって 一人きりだって 負けたくないの

 夢を明かせず、孤独な胸の内を吐露した「don’t cry anymore」で2010年にデビュー。「日本の隅々に歌を届けたい」と翌年からアコースティックギターを手に、全国47都道府県を回り始めた。開始時は300人程度だった会場は、8年をかけ全国を巡る中で、規模を拡大。6月に横浜アリーナで完走した。

「弾き語りは私の原点」

 女性ソロアーティストが、同アリーナで弾き語り公演をするのは、史上初めて。デビュー曲で始まった最終公演には、シーンごとに一輪の花が飾られた。

 ギターを手に向かった舞台の幕開けは“決意”の花言葉を持つピンクのゼラニウムが見守った。「歌が、みんなを照らす光になるように」と願い作った「ヒカリへ」では、白いトルコギキョウに“希望”を託した。アンコールでは黄色いバラが揺れる中、1万人と「結-ゆい-」を合唱。“友情”を確かめた。

 「待っていてくれる人がいるから、歌い続けることができた」

 列島横断中、手拍子に励まされ、タオルを回して喜ぶ姿に、勇気をもらった。

 「感謝の気持ちを歌にしたい」。感じた思いを、初のベスト盤「miwa THE BEST」に収録した「アコースティックヒストリー」の歌詞にした。

 「5年前は、強がって『一人きり』と歌っていた。でもいまは支えてくれる『みんな』が浮かぶ。受け取った思いを力にして、みんなに届けていきたい」

◆プロフィル みわ シンガー・ソングライター。1990年、葉山町生まれ。2010年3月に、シングル「don’t cry anymore」で慶応大在学中にプロ始動。翌年発売した「guitarissimo」で、平成生まれのシンガー・ソングライターとして初めてアルバムチャート1位を達成した。13年に「NHK紅白歌合戦」に初出場。以降、4年連続で大みそかの舞台に立った。17年には映画「君と100回目の恋」で銀幕デビュー。ベストアルバム「miwa THE BEST」を携えたツアーが9月22日、東京・オリンパスホール八王子で幕開けする。自己最多の30公演を展開。19年3月に日本武道館で千秋楽を迎える。

◆記者の一言 東京ドームでロックバンドのライブを鑑賞した11日、水道橋からの帰路にツイッターをのぞくと、「miwa」「ショート」の文字が画面に浮かんだ。「?」と思い調べると、miwaさんの公式アカウントに「昨日髪切りました」という文字と、茨城で行われた音楽フェスに出演したmiwaさんの写真が投稿されていた。胸の下まであった長い髪は、耳の下ほどの長さまでばっさり。「見た目も気持ちも生まれ変わったような、新鮮なライブでした!」。すぐに取材時に撮影した写真のことを思い出し「あちゃー」となった。でも私もセミロングだった髪を6月に20センチほど切ったので、さっぱり感には共感。聞けば、前から切りたかったとのこと。仕方ない。愛らしい横顔を見て、うなずいた。

miwaさん

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